第11話 ストーカーは犯罪です。
翌朝の天気は雲ひとつない青空。
だが、僕にとっては、どんよりとした気持ちを抱えて、学校へ向かっていた。
「元気ないね」
横から心配そうに聞いてくる今野宮は、家を出た時から一緒だ。
「あの、そもそも」
「何かな?」
「何で、今野宮さん、僕の家を知ってるの?」
「おかしいかな?」
「いや、調べようとすれば、先生に聞くとかでわかると思うけど、そんなことしてないよね?」
「してないよ」
「だったら、何で?」
「クラスの連絡網だよ」
あっさりと答える今野宮に対して、僕はかぶりを振る。
「いや、あれには電話番号しか書いてないはずじゃ……」
「冗談だよ」
笑みを浮かべる今野宮。連絡網じゃないなら、どうやって、家の前で待つことができたんだろう。
「何回か、片垣くんのことが気になって、家に帰るところまでついていったことがあるんだよ。 それでだよ」
「それ、ちょっとしたストーカーだよね?」
「今はしてないよ」
「いや、今じゃなくても……」
「大丈夫、大丈夫」
「何が大丈夫何だか……」
僕は今野宮を問い詰めることは諦め、昨日会った神前のことを振り返っていた。
「神前さん、今野宮さんと別れてほしいって、言ってきたよ」
「片垣くんは何て答えたのかな?」
「特に何も」
「別れないって、答えなかったんだ……」
「それはまあ、僕は神前さんのことが好きだから……」
「でも、すぐに別れるとは言わなかったんだね」
「僕としては、今野宮さんと付き合っているというウソ自体を神前さんにわかってもらった後、告白したいから」
「玉砕覚悟だね」
「今野宮さんを見習ってだから」
僕が言うと、「そっかそっか」と今野宮は何回もうなずく。
にしても、神前が言っていた、入学式で会った今野宮は本当なのだろうか。中学までいじめに遭い、高校は友達ができるか不安そうにしていた話だ。事実かどうかを本人に確かめる勇気はないけれど。
僕は前を普通に歩く今野宮の後ろ姿をぼんやりと見つつ、学校へ足を進ませていった。
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