第5話 少女の涙
西塔の地下、様々な拷問器具や鎖がある部屋で一行はカオステラーに会う。
レイナ「悪趣味な部屋ね」
???「ノックも挨拶もなしにそれ?躾がなってないのね?」
クロヴィス「貴様なんぞに礼儀はいらんだろ」
???「あなた、大体のこと暴力で終わらすでしょう」
クロヴィス「なんだと・・・!」
エクス「お、落ち着いて・・・」
かつてこんなにも緊張感のない敵との対面があっただろうか。
赤と黒をメインで作られたドレスは部屋の雰囲気により、不気味さを醸し出している。
???「まずは挨拶、それから自己紹介。当たり前のことでしょう?という訳で皆さんこんばんは、私はミザリ・フィーユ。カオステラーよ」
タオ「こいつまじかよ・・・!」
シェイン「ども、シェインです」
エクス「えっと、こんばんは・・・?」
ミザリ「今昼なんだからこんにちはでしょう?」
エクス「えぇぇ・・・」
すっかりミザリのペースに飲まれた一行。
彼女の言葉に戸惑うが本人はお構い無しといったようにゆっくりと、滑らかに立ち上がる。
そしてそばに置いてあった杖を取り、一行に向き合う。
ミザリ「あなた達は私を殺しに来たのでしょう?ならば早くしましょうよ。さっさと終わらせて本を読みたいの」
ミザリ「ああ・・・」
杖を落とし、机にもたれかかるミザリ。
そのそばにレイナが来て問いかける。
レイナ「どうして彼女たちを傷つけたの、あなたは何をしたかったの?」
怒ったようなレイナの口調にミザリの肩が跳ねる。そして、ポツポツと喋り出す。
最愛の姉が殺されたこと、そしてその殺した男を殺してしまったこと、それが悪夢となって消えないこと、多くのミザリ達がそれに悩まされていたこと、そして何よりも・・・
ミザリ「白雪姫もアリスもシンデレラもロミオとジュリエットもドン・キホーテもみんな、みんな強かった・・・『自分』を持ってて、自分が決めた道を真っ直ぐに歩める力があった・・・。そういった人達は決まって傷つけられた。苦しさを味わった。私はそれから解放したかった・・・・・・!」
エメラルドの瞳から透明な雫がこぼれ落ちる。次から次にこぼれ落ちるそれは彼女が今まで明かせずにいた思いそのものだった。
ミザリ「分かってた・・・分かってたよう・・・間違ってるだなんて・・・・・・意味無いことだって・・・・・・けど、傷つけたくなかったんだよう・・・悲しい顔させたくなかったんだよう・・・・・・だから、だからあのこたちをきずつけるやつらをころしたんだよう・・・・・・あのこたちのらくえんをつくりたかったんだよう・・・・・・」
幼子が両親に叱られた時のように、涙を拭いながら、話すミザリ。
一行がかけるべき言葉を探している時、ミザリが立ち上がってレイナの元へ来る。
ずっと俯いて見えなかったミザリの顔は涙のあとがつき、擦りすぎて赤くなっていた。
ミザリ「もどせるのなら・・・もどしてください・・・・・・わたしだっていつかはおわらせなきやってしってたから・・・・・・ただおわらせかたがわからなかったから・・・・・・おねがいします・・・れいなさん・・・・・・」
おねがいします。と再度頭を下げるミザリ。
その姿を見てレイナは頷き、本を開く。
レイナ『混沌の渦に飲まれし語り部よ・・・我の言の葉によりてここに調律を開始せし・・・』
レイナの調律によって元に戻った悲劇の想区。
カオステラーがいようといまいとこの想区の悲劇は終わらない。しかし、毒林檎の王妃が人形を使って処刑を逃れるように、ロミオとジュリエットが周りの目を欺いて海外に逃げ出すように。彼女たちにも新たな道が開けるのかもしれないーーーー。
狂った悲劇の想区 @saiteki
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