第13話 やっぱり読んだ方がよい

【Q】

 小説を書く上でやっていてよかったと思うことはなんですか。


【A】

 暇を持て余していた時期に本を読んでいたことです。


【Q】

 反対にやっておけばよかったと思うことは。


【A】

 自由な時間があるうちに映画をたくさん見ておくべきだったと後悔しています。





 これを書いている週は慢性的な寝不足と疲労、そしておそらく梅雨時の気圧や気候の影響諸々で心身の調子が悪く、創作活動がはかどりませんでした。

 こういう時は静かに休むのが一番ですが、それができないのが辛い所です。

 私にはどうやらライターズハイで更新中毒なところがあり、とにかく書いたり更新しないと不安で不安で仕方なくなる気質らしいと自覚するに至りました。とはいえ調子が悪いと頭の働きも鈍るので納得ゆくものも書けない。

 無理やり書いても面白くなくて苦痛であり実生活にも影響が出始めたために、とにかく意識して書くことから気をそらすことに努めておりました。


 機嫌よく小説を書くには体調と精神面の管理が何より大事であるなあ、と、しみじみ思い知った次第です。




 さて、体調も戻ってきたのでしばらく休んでるこちらのエッセイの続きを更新してみたくなりました(こちらはもともと不定期でだらだらやりたかったので、今後もこのように間隔が空くことがあるかと思います。ご了承ください)。



 以前から創作論系のエッセイを読むことが多いので自分でも書いてみたくなったたものの「お前はそんな大層な身分か」という内なる声が指摘したことに加えて、そもそも語れる程の論を持っていなかったことに気がついて一旦諦めることにしました。


 代わりに、「これをやっていたお陰で創作活動の足しになっているのかもしれない」と思うことについて答えてみることにします。



 このエッセイの最初の方で、小説を書くことなく本ばかり読んでいた時期が長かった、自分で書くより読む方が圧倒的に楽しかったといったことを書いております。基本的に今でもそうです。当たり前ですがプロが書かれたものは圧倒的に面白いし、自分の頭の中にあるものは自分で書かなければ仕方がないという事情がなければ自分で小説を書く気になんてなれなかったと思います。


 広く浅く、そして読んだ端から内容を忘れるというタイプであり、感想文やレビュー文の類が苦手なので「この本の良かったところはどこですか?」「この本で一行ぬきだすとしたらどこですか?」と問われても「……えーと、一言で言えませんがとりあえず面白かったところです」「(一行……覚えてない……)」ぐらいのことしか言えないダメな本読みですが、まあそれなりにそこそこ本は読んでいたと思います。

 目を通していただけに終わった本もあれば、読み終わって数年経っても「あれは面白かったな、好きだったな」としみじみ反芻する本もあり、頭の中にイメージがこびりついている本もあり、思い出すだけで腹が立つので積極的に忘れようとしている本もあり、そして部屋の片隅にはまだ読んでない本の山があり……とにもかくにもこれからも本とは良い関係を維持してゆきたいなという気持ちがあります。

 ……そういえば「本」とざっくり語っておりますが、基本的に私がよく読むのは小説、エッセイ、時々ノンフィクションです。


 とはいえ、本格的に本を読むようになったのは二十代前半からなので結構遅めです。行動半径が広がり金銭的な余裕もうまれたことから自分の好きな本を取り扱っている本屋に気軽に立ち寄ることも、学生時代ならちょっと躊躇するような値段の本も頑張れば買えるようになったので、気に入ったブックガイドや書評家の勧める本に素直に従って読んでいるうちに自分にとってしっくりくる本がようやくわかり、それからは好みのタイプの本を中心に気になる本を読んで今に至る感じです。

 ……プロの勧めに従って本を手に取るあたり恥ずかしいほど素直な本読みですね、我ながら。

 それまでも本は好きでしたが本を読むことは苦手で不得手でした。なかなか自分にしっくりくる本と出会えなかったのです(本が好きなのに読むことは苦手とはどういうこと? と首を捻る方へ……また機会がありましたら説明いたします)。


 以前、テレビでピースの又吉さんが「一度読んで分からなかった本も、ちょっと間を置いて別の本を読んでから、もう一度その本を読むと『分かる……! 分かる……!』ってなる」と仰っていたように記憶しておりますが、その言葉にものすごく共感した覚えがあります。そういう経験を経ると、もっともっと……って本を読みたくなりますよね。

 

 まあ、そんな塩梅でそこそこ読み耽る生活をつづけていたわけです。



 現状、私が書いているものは自分のテレビアニメ・ドラマ好きを反映したようなキャラクター性の強い小説が殆どですが、読む方では「SFともファンタジーともホラーとも違うが主に日常生活をベースになんだか奇妙なことが起きたりして、わかったようなわからないような物語が続くが読み終わったあとにしみじみ感動してたり面白かったなという余韻を得ていたりする翻訳物の中短編および長編」が好きです。よくマジックリアリズムとして紹介されるジャンルですね。河出、早川、東京創元社、白水社あたりが翻訳してくれそうなやつです。私がよく書いているものとあまり被っていません。

 

 特にケリー・リンクを初めて読んだ時に「こんな小説があっていいんだ!」びっくりしたこともあって勝手にフェイバリットな作家の一人に挙げさせて頂いております(ダメな日本語文の見本みたいになりました)。

 ここ数年読んだ中では、ケイト・アトキンソン、ジュディ・バドニッツとかカレン・ラッセルだとかも面白かった……。長編の『スワンプランディア!』とか、好きすぎて今でも頭の中に居座ってるくらいですよ……。ああいうのが書けたらなんにもいらない。

 こういうジャンルは北米か東欧が強いのかと思っていたら(マジックリアリズムの本場っぽい南米産のものはあまり読まない。……ああでも『バイクとユニコーン』というキューバの小説が面白かった)、最近は同じようなマジックリアリズムな風合いのアジア系作家の作品も紹介されるようになって喜んでおります。呉明益『歩道橋の魔術師』、パクミンギュ『カステラ』『ピンポン』とかが好みでした。パクミンギュさんは面白いよね、本当に……。

 このジャンルは、最近では藤野可織さんや松田青子さんとか、日本の作家さんも面白いものを発表してくださるのでやっぱり嬉しいものです。藤野さんの『おはなしして子ちゃん』とか『ファイナルガール』とかもいいですね。あとこの流れとは違う気がしますが、川上弘美さんも恋愛小説よりクマとかタコとか蛇とかが出てくる方の小説が好きです。


 ――なんだか、好きなものについて早口で喋る人みたいなことになってしまいました。失礼しました。


 そのほかよく読んでるなという自覚があるのは、「生活の描写が細かすぎるもの」「女の人の横繋がりが重点的に書かれているもの(※お察しください)」「国内外の児童文学、YA」「戦前戦後の少女小説、風俗小説」などです。他のジャンルも面白そうだなと思えば読んだりしています。あああとそういえば野坂昭如は今では『火垂るの墓』みたいな人になってたりあの文体が読みにくいとか言われてるけれどなんでだ、あの文体すごい格好いいじゃないか……――とか言い出すと止まらなくて本気で気持ち悪いので、そろそろ止めます。

 

 書くためには読め、と、大抵の小説の指南書でも仰られているように思われますが、やはりそれは正解であるような実感があります。

 今こうしてあまり読まれない小説をなんとか書ける体力があるのも、「おもしろいなあ、すごいなあ」となりながら無駄に読んでいたことが今財産になっているなという自覚はありますね。読んでると、物語の類型みたいのもつかめてくるので「この展開がこうなったら次はこうする」という見通しがある程度立てやすくなります。自作でそれが効果的に活かされているかどうかは分かりませんが……。


 そのほか、「小説とはかくあるべし!」みたいな思い込みから解放されるので、時間があるうちはいろんなタイプの小説をとにかく読んでおいた方がよいですよ、と、私などは思います。世の中にはストーリーがあるんだかないんだかそもそも何を言いたいんだかサッパリわからない小説や、地の文や会話文が地続きのやつだとか、思いもよらないものがたくさんあって面白いですよ。

 

 たくさん読むことには即効性もありませんし、独りよがりになりがちなのでプロデビューを目指す人にとってはあまり有効的ではないかもしれませんが、基礎体力的なものは間違いなくついてくるように思います。



 反対に、「やっておけばよかった」と悔やんでいることについてです。

 

 私は本当に映画を見ない人間なのですよ……。もともと身近に映画館のない田舎で育ったこともあるのか、二時間近く同じ画面を見続けることに耐えられないのかなんなのか。

 好きな映画監督の新作が公開されたりした時でないと映画館にはいかないタイプの人間です。実は「なんとかロードショー」みたいな番組でテレビ放送されるくらいが一番見やすかったりします(カットされまくることには閉口しますが)。


 これがちょっとコンプレックスだったりします。見ていて当たり前な名作映画の知識に欠けていてなんとなく恥ずかしいものです。


 それと、映画をたくさん見ておけばよかった~……と思う理由の一つが。

 

 どうも私には話を短く適度にまとめるという腕が無く、放っておくと長くなってしまいがちなのです。

 映画はだいたいどんなに長くても二時間内で終わりますよね。そこでコンパクトに笑うとこ泣くとこ、ハラハラさせるところを入れて大団円できっちり収めている(ハッピーエンドで終わるものなら)。

 ピクサーの諸作品などをテレビでみては「上手に作ってあるなあ」としみじみ感じいってしまいます。どうやったらこんな風に物語をつくれるのか、と。


 短い尺の中でその要素をどうやって収めるのか、そのカンが自分の中ではないのです。もし映画をみていたらなんとなくわかるようになっていたかもなあ……とちょっと悔やまれてしまうのです。脚本の指南書もあるけれどやっぱりああいうのは直に見て自分で考えるのが一番早いような気がしてしまうのでした。 

 

 

 昔はテレビでやたら放送していた覚えがあるのに今ではとんと放送されなくなった「依頼人」というサスペンス映画がありますが、ああいうハラハラするようなストーリーを一度作ってみたいですね……。自分の作風とは全く異なるけれど。

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