第10話 書いていて楽しいキャラクター

【Q】

 主人公と悪役、どっちが書きやすいですか。


【A】

 悪役です。

 しかもカリスマ性と強い信念を持ち主人公に立ちはだかる魅力的な宿敵とかではなく、ただ単に意地悪な人やこずるい小悪党を書くのが大好きで、ひょっとしたら得意です。




 ……これで終了するのもなんですので、もうちょっと詳しく説明など。


 先に述べました通り、圧倒的に主人公より悪役を書くのが好きです。

 それもただ卑近でゲスいやつが好きです。戸愚呂兄弟で喩えるなら弟ではなく兄みたいなキャラクターの方が書いていて断然楽しい。


 そもそも私の書く小説は、英雄的な主人公が壮大な旅と戦いの果てに自分とは正反対の考え方を持つ偉大な宿敵と戦って世界を救ったり変えたりするようなタイプの話ではなく、どこぞの勇者が魔王を倒すような世界の片隅で無名の人々がドタバタギャーギャーやってる卑小で卑近な話です。なので、戸愚呂弟だとかラオウみたいなタイプの悪役が登場する余地がもともとありません。



 卑近でゲスな悪役とはジャンルが異なるかと思いますが、いわゆる意地悪お嬢様(最近は「悪役令嬢」と呼ぶのが主流なんでしょうか)も大好きですね。大好物ですね。


 古い作品だけれど「小公女セーラ」のアメリアのような……。こういうお嬢様系ヒールのやらかす意地悪に本気で怒りムカつき、ノートにヘイト創作を書き連ねるような時期が過ぎると、自分の欲望やネガテイブな感情をオープンにする彼女らにヒロインよりも却って親しみや魅力を感じるようになるものですよね(←知らんがな)。

 でもいくら好きでも、意地悪お嬢様はやっぱムカつくんだけどね。ていうか意地悪なお嬢様は高慢ちきで意地悪で読み手を一旦は心の底から本気でムカつかせてナンボだよね。意地悪のツメが甘かった結果可愛らしいことになるのはまだ許せるけど、実はいい人とか実は庶民派とかそういうのはダメだと思うの。意地悪お嬢様というキャラクターの最大の旨みを殺すと思うの……。


 ついうっかり思わぬ形で意地悪お嬢様への偏愛をバラしてしまいましたが、それと同時にスクールカーストの上位にいそうなギャル系の意地悪ガールもフィクション上で接するのならば好きです。現実で接するのは怖いので遠慮したいのですが。


 こういうギャル系意地悪ガールがたまに言い放つ非常に冴えた悪口の技量に魅せられることがしばしばあります(あの種のギャル系女子はベストなタイミングで上手いことを言い放つというイメージがあるからこそ、創作実話に登場する「マックの女子高生」なる理不尽な現実をズバズバ斬りまくるキャラクターが生まれるのでしょう)。


 悪口の餌食にはなりたくないけれど、瞬時にパッと冴えたフレーズを口にできる言語方面での瞬発力は素直に羨ましい……という思いから、こういうタイプのギャル系意地悪ガールも名無しの状態でしばしば登場させています。


 そんなわけで色んなタイプの意地悪な女の子を書くときはそれはもうノリノリになっています。自作を何作か読んでくださった方なら「あー……」と納得していただけるかもしれません。


 ノリノリになって書いているせいで、主人公に小さい意地悪をしかけて足を引っ張るだけの役回りにしようと思っていたつもりだったのに、書いているうちに大化けしてかなりのキーパーソンに昇格してしまったキャラクターも何人か結構います。


 ……しかしこうなると作者が当初の狙い通りにキャラクターを描けていない≒管理できていないということになりますので「悪役が描くのが得意」というのとはちょっと違うような。


 一応、「狙った通りのベタな意地悪モブ軍団が描けた!」という手応えを得た作品もあります。こちらになります。以下宣伝。


 https://kakuyomu.jp/works/1177354054883925611


 小学校高学年から上の女の子を対象にした女児アニメ風現代ファンタジーコメディー小説です。この作品に登場する悪役の女子中学生集団は我ながらいい感じのベタで憎たらしい意地悪ガールズに仕上げられたという自負がちょっとだけあります。そしてやっぱり書いていて非常に楽しかった。


(そんな意地悪ガールズが出てくる小説読むのヤダよ、意地悪女子なんて読みたくないよ……となった方へ、当作品はコメディーです。ハッピーエンドです。安心してお読みください)



 長編連載中などによく近況ノートで「意地悪役を書くのが楽しい」とか「悪役を書いてる時にノリノリになる」等の所感を漏らしていることがあります。

 あれは特にウケをねらっていたりするわけではなく実際その通りなんですよ。意地の悪い人を書いてるときは、ウヒョーたーのしー! というような妙なテンションになってキーボードをカタカタやってる時があります。


 悪役に限らず私の書いている小説は主人公やその側にいるキャラクターもわりと悪辣で人を人とも思わない利己的な性格をしていることが多いのですが、そういうキャラクターを書くときも恥ずかしながらかなり楽しい。


 そしてその反動で我に帰った時に、「こんなクソみたいなヤツを書いてて楽しくなる自分は人としてどうなんだろう……」と冷静になった時の反省などが近況ノートに現れたりしているわけですね。


 なんで意地悪なキャラクターが書くのが好きで楽しいのか……。

 恥ずかしながら、自分の中にある悪い部分や醜い部分を遠慮せずフルオープンにできるからかもしれません。


 実生活上ではなかなか本音を主張できないチキンなので、やりたい放題やってる意地悪キャラクターを書くことで思う存分ストレス発散をしている所があるのかもしれません。うーん、人として器が小さい。



 反対に主人公およびその仲間達ですが、こちらを書く方がだんぜん難しい。

 主人公なので読んでいただいた方には好きになってもらいたい、可愛くカッコよく魅力的なキャラクター、もしくは共感できて親しみが抱けるキャラクターだと思ってもらいたい、そういう気負いがどうしても生まれてしまいます。これがとにかく厄介で。


 書きながら何度も何度も「この子はこれで大丈夫?」「ちゃんと魅力的な子になってる?」と不安になっては読み返したりしてしまいます。まるで外出前の服装が気になって鏡でチェックするデート前の女子の如し。

 ですので偶に主人公のキャラクターを気に入っていただいたりほめていただくと、嬉しいのと同時に安堵で溶けそうになっています。


 意地悪キャラクターは読者目線を気にする必要が一切ないのでとにかく楽で助かります。


 ……思えば「人の目を気にしていない」という点が、私が意地悪なキャラクターに惹かれる点かもしれません。


※念のためお断りしますが、フィクション上で意地悪なキャラクターに遭遇するのは好きですであっても現実での意地悪には遭遇したくありませんし、当然意地悪を振るうことも推奨も賛同もいたしません。


 その点だけはくれぐれも誤解なきようお願い致します。


※自作でもコメディー作品では意地悪なキャラクターがなんのペナルティーも受けずそのままのさばることがないように気をつけております。


 反面、血も凍るような根っから意地悪なキャラクターが思うままに生きるようなストーリーも書いてみたいような目標もあるのですが……。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます