第4話 王都の中で
「想像してたより王都の規模がデカかったのは良いとして」
『まあね、一応首都だし? でもまさか王城が浮いてるとは思わなかったでそ」
「たしかに」
「どこぞの漫画を真似したとしか思えん」
『その気持ちはあった。正直真似した。そういや――』
「まだ終わってないどころか恐ろしい設定変更があってな……」
『なになに? 作者の人の設定厨っぷりは元のアニメ時代から知ってるけど何がどうしたの?』
「あとでな、あとで」
王都に入った私と旦那は、思わずこの街の感想を口にしていた。
まさしくトンデモ王都である。
なお、アズールさんの立場的なことを考えると当然といえば当然だけど、街に入る際に特にこれと言って調べられる事もなく。
私たちは、あっさりと王都に足を踏み入れたのである。
街の周囲を覆う壁をくぐり抜けると、そこは大きく開かれた広場となっていた。
聞けば、この外壁は中心部にある旧中心部という所が起点となっているらしい。
『最初はわりと小さめ、ていどの城塞都市だったんだけどね。僕が来た時はほとんど廃墟になりかけてたけど』
鈴木氏いわく、ココを王都にする気は最初無かったらしい。
でも、他にこれと言った立地の所がなかった、というか先に取られていたわけだ。
『で、仕方なくココを拠点と定めたんだけど、そしたらどんどん人が集まってきてさ』
集まってきた者達を無碍にも出来ず、中心部周辺に掘っ立て小屋を建てて仮住まいさせたらしい。
そして、修繕が済んだところで逐次住まわせていったらしいんだけれど、その数がどんどん増えて、城壁内部の建物だけじゃ間に合わなくなってしまったと。
『仕方なく壁の外の建物を改修してマトモな建物にしてさ、そこに住んでもらうことにしたんだけど、やっぱ壁がないとねって事でもう一周壁作ったんだけどさ……』
中心部の城壁を覆うように出来あがった街を、更に覆う外壁を作ったまでは良かったが。
『その更に外側に住み着く人が出てきてさぁ……もうしょうが無いってんでそこからはもう拡大する前提に切り替えたんだよね』
そして今、この王都は二重の中心部の壁と、その外部に増築前提で築かれた螺旋状の城壁が存在する異色の超巨大城壁として出来上がったわけである。
と言うか、まだ城壁伸ばしてるとかなんとか。
「カタツムリかよ」
「で、端っこは今どのへんなのさ」
『さあ?こっち側からは見えなかったから、向こう側なんじゃないかな?』
流石に二百年経ってると、鈴木氏もそのあたりはわからないだろうなぁ。
なお、螺旋を貫くようにして、中心部へと伸びる道が私達の前に存在している。
当然、途中には壁が有るが、門はなく、内部へと抜けられる通路が開いているとのこと。
「流石にグルっと回ってって事はないのか」
「いざ襲撃とかがあったら通路を閉ざせばいいだけだしな」
『そだね。あちこちに通路を開けてあるはずだけど、すぐ塞げるようになってるからね。天井落としみたいになってるから』
「門の衛兵に双子を雇いたくなる作りだな」
『あー、それ考えたんだけどねぇ』
「二人一組の拳法使いとかレアすぎるからヤメレ」
そんな馬鹿話をしながら街の中心部へと進む馬車の後ろをついていく。
周りの建物はパルケ・エスパーニャかハウステンボスかって感じである。
予想以上に建物の色がパステル調だ。
『あ、そうなんだよね。それイメージして作ったんだ。今も似た感じで増えてるみたいだなぁ』
犯人は海外に行ったことが無かった鈴木氏であった。
暗い色合いよりは雰囲気が良くなるだろうけど、ワタシ的にはファンタジー世界のイメージが……。
『だってリアルで見たものにしか加工出来ないスキルだったし、日本家屋みたいなのは火に弱いし……そもそもあんま木が生えてないからね、この辺』
仕方ないと言うか結構切実な話だった。
戦争に限らず魔獣とかの襲撃を考えたら、石造りとかレンガの建物でないとたしかに拙い。
と言うか、住む人みんなに安全な家与えてたら、そりゃ人も集まるわ。
『まあ人が集まらないと国としてやっていけなかったからさ……覚悟の上?』
「で、やりすぎたと」
「結果オーライみたいだけどね」
街の中を行き交う人々の顔は、皆明るい。
活気にあふれている。
そこここで賑わう店が目につく。
『うん、今の王様も中々良い政してるみたいで一安心だよ』
「……あー、うん。ちょっとお馬鹿な気もしなくもないけどね、政治とか内政は別にして」
先日の、試し切りしたい王様の件を伝えてみる。
関係者と言うか当事者みたいなモンだからね、言ってもいいよね。
『えええ……。僕が渡したの、使いこなせてないんだ……誰でも使えるはずなんだけどなぁ』
「しかしMPが足りない」
『あ~、そっか。最初の子の血筋だと、普通の人間だからなぁ。僕の因子が薄まったらそりゃ使えなくなるか……』
「いやいやいや、あの鉄塊の剣の方が使い手選ぶからな? 仕方なかろう」
ああ、ミハがタマに出してるあのデカイごついやつな。
常人には持てやせん。
それと比べたら遥かにマシだとは思う。
なんとか使えるようにしたし。
『そうなんだ。助かるよ』
「まあその辺はアズールさんとそのお父上にお礼言ってあげて。私手伝っただけなんだから」
『そっか、イーセンにも会えたら礼言っとかなくちゃな』
アズールさんのお父上、そういやご友人でしたね。
なんか気が合うのがわかる気がしなくもない二人だわ。
「で、それはそれとして、どこ向かってんだろ」
『え? 王都のギルドに寄ってくんじゃないかな? 第二中心街の外壁が見えてきたし』
幾つかの壁の下をくぐり、王都の中心部へと近づいているのはわかる。
空に浮かぶ王城にどう行くのかはわからないのだが、中心部にそびえ立つ尖塔があるのでそれが何らかの移動手段だと思っていたのだが。
ああ、ギルドに行くんだろうなというのは理解の範疇である。
が。
「街の中心のあの塔みたいなのはお城の一部じゃないんだ?」
『アレはただの見張りの塔だけど?』
「あ、そうなんだ」
ただの見張り台だった。
てっきりあそこから上に登るんだと思ってたよ。
LARP用のアイテム作りが趣味なんですけど何故か異世界に飛ばされたんだけど何だこれ でぶでぶ @debudebu
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