紅茶好きで陽気なハリソン教授

                二章


   ワシントン州 ワシントン大学 二〇一二年五月一九日 午後三時〇〇分

 コンサートも満喫して気持ちが充実した香澄は、その後も大学や自宅で心理学を中心に、積極的に学ぶ。きちんと予習と復習を行っていたためか、授業や講義の試験も難なくクリアしつつ、好成績を維持していた。その記録は小学生時代から更新中で、このままいけば大学生まで記録更新可能。

 期待の星として注目されている香澄は、ゼミの担当者であるケビン・T・ハリソン教授の部屋で詳しい話を聞く。ケビンもまたワシントン大学の卒業生で、フローラの一年先輩で一つ年上。今年で四二歳となるケビンは、親日家として好評の先生でもある。


 姿勢良く椅子に座り、ただケビンの言葉を待つ香澄。そんな香澄の様子を確認したケビンは、彼女のために特製の紅茶をれる。

「とりあえず紅茶をどうぞ。さぁ、カスミ。席に座って」

「はい、ありがとうございます。……いただきますね」

大好きな紅茶を一口飲んだ香澄は、“美味しい”と心の中でまろやかな口当たりを堪能する。うっとりしている香澄の表情を見たケビンは頬や緩みつつも、机の上に彼女の成績表を広げる。


            『香澄の成績表について』

一 語学力(外国語)について……日本人留学生でありながら成績もAが中心で、語学(特に英語)について非の打ちどころがない。そのため彼女の英語スキルは、ネイティブ並みといっても過言ではない。

二 一般科目(基礎科目)について……平均より上の成績を収めている。また過去の日本人留学生と比較しても、上位の成績を記録していることが特徴。成績もB+~Aが中心で、今後もこの調子でいくことが望ましい。

三 専門科目(心理学)について……心理学の成績も上位を維持しており、Bは二年生に取得した一つだけで、それ以降はAを取り続けている。今後もこの調子でいくことが望ましい。

四 GPAも三.八と平均以上を維持しており、生徒全員と比較しても好成績。大学構内の評判も非常に良く、生徒や講師らと積極的にコミュニケーションを取っている模様。学校の成績と直結しないが、人当たり・社交性・協調性ともに問題ない。心理職員(臨床心理士・心理カウンセラー)として、十分に適性がある。


 香澄は自分の成績表を見せてもらい、自分がどのように評価されているか知る。一方でケビンの表情はとても明るく、“自分が過去に担当した日本人留学生でも、これほどの好成績を取った生徒はいない”と香澄を高く評価している。

「カスミは過去に前例がないほど、日本人留学生として好成績を記録している。いや――うちの全生徒と比較しても、おそらく上位の成績じゃないかな?」

「ありがとうございます、ケビン」

「……ここだけの話だけどね。カスミのことは、妻のフローラからも聞いているよ。“非常に勉強熱心で真面目な生徒”だって、フローラも君のことを高く評価しているよ」

自分は特に意識しているつもりはないが、多くの教員から高い評価を受けていると聞き、香澄は照れ笑いしつつ、頬を赤くして笑みを浮かべてしまう。

 さらにケビンは香澄の家族をはじめ、ルームメイトとして同居しているマーガレットのことについても、色々と話が盛り上がる。

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