何気ない日々
ワシントン州 ハリソン夫妻の自宅 二〇一四年三月二三日 午後九時〇〇分
この時は自宅に誰もいないということもあり、トーマスは少し遠出をして遊びに行っていた。だが家を出たのが午後三時三〇分ごろであったので、自宅近くのお店をウィンドーショッピングするだけだった。しかしちょうど良い息抜きとなったため、トーマスの顔はどことなく満足げ。また外出時に夕食も済ませていたので、自宅に戻った後はお風呂に入って、その後は歯磨きをして寝るだけ。
「ち、ちょっと帰りが遅くなったかな? ……でもみんなだって普段外食しているんだから、たまには僕も外で食事してもいいよね」
などと自問自答しつつも、トーマスは自宅に到着する。
すると家の外灯が点いていたので、誰か帰って来たのかと思いドアを開ける。案の定自分が外出前にかけたはずの鍵が開いていたので、
「ただいま……誰かいるの!?」
と元気な声で返事を求めた。トーマスが辺りを見渡すとリビングに灯りが点いており、ソファーに腰をかけているケビンが声をかける。
「おかえり、トム。……ちゃんと夜ご飯は食べてきたかな?」
「ただいま、ケビン。うん、大丈夫だよ。ところでフローラはどこにいるの?」
「あぁ、フローラなら今バスタブにお湯を入れているよ。何だったら先に入ってもいいよ」
普通の親子が会話するような世間話を楽しむ。
そして少し遅れてフローラもリビングへと戻り、
「あら……おかえりなさい、トム。今バスタブにお湯入れたばかりだから……あと一〇分くらいかしら?」
「フローラ、ただいま。一〇分くらいだね、ありがとう」
近くで二人の会話を聞いていたかのように、家族の団欒に入る。
リビングではトーマスとハリソン夫妻が会話を楽しんでいると、時刻は夜の九時一〇分となっていた。もうバスタブにお湯が入ったころだと思ったハリソン教授は、
「……おっ、もう一〇分になったんだね。もうお風呂に入れると思うよ」
トーマスへ体を綺麗にするように促す。同時にフローラも
「そうね。私たちは後でゆっくり入るから、お先にどうぞ。それともトム……昔みたいに一緒に入る?」
「僕もう子供じゃないんだから、一人で入れるよ!」
トーマスをからかうが、いつものように顔を赤くしながら彼は一人先にリビングを出る。
洗面所へ着くとすぐに彼は着ている衣服を脱ぎ始め、洗濯かごに入れると用意してあったタオルを持って体を綺麗にする。体と髪を綺麗にした後でバスタブに入りつつも、“フローラの僕をからかう癖は止めて欲しい”トーマスは一人願っていた……
体を綺麗にしてパジャマに着替えたトーマスは、そのままリビングへと向かう。そして自分が入り終わったことを伝えると、ケビンが“先に入る”と言って部屋を出た。一方でフローラは台所でフルーツをカットしている。そして出来上がったばかりのフルーツをお皿に盛りつけ、それをトーマスの前にそっと並べる。
「トム、今日のフルーツよ。食べやすいように、カットしておいたからね」
「うん、ありがとう。フローラ」
お礼を一言言うと、カットしていたリンゴを順番につまんでいく。
二人はしばらくリビングで会話を楽しんでいると、体を綺麗にしたケビンが戻ってくる。その姿を見るや否や、フローラは冷蔵庫から缶ビールを一本取り出した。フローラが缶ビールを差し出すと、“ありがとう”とお礼を言ってケビンがふたを開ける。
一通り家事を終えたフローラがバスタブへ向かおうとした矢先、
「ただいま」
とドアを開ける女性の声が聞こえてきた。次第に足音が近づいてきて、リビングのドアを開けたのはジェニファーだった。すぐに“おかえりなさい”と挨拶をした三人に続いて、ジェニファーも再度挨拶をする。
書店のアルバイトで疲れていたはずのジェニファーだが、そんな素振りを見せずに冷蔵庫から飲み物を取り出し、飲み物をコップに入れて“ゴクゴク”と飲み干す。
「……ふぅ~、今日も疲れたわ」
緊張が抜けたことによるあくびをしてしまったジェニファーは、その姿をじっと見つめているトーマスと視線が合う。
「もう、やだ!? そんなに真顔で私の恥ずかしい姿を見つめないで、トム」
少し頬を赤く染めながらも、優しく注意するジェニファー。一方で彼女のあくびに連鎖反応を示すかのように、あくびを出すトーマス。
「あれ? な、何だか僕も急に眠たくなってきたな……」
“きっと外出の疲れが出たのかな?”と思い、“僕は先に寝るね”と挨拶する。それを聞いたフローラは、
「あら、もう寝るの? じゃあ先に洗面所使っていいわよ。しっかりと歯磨きをするのよ。お休み、トム」
「うん、わかった。……みんな、お休みなさい」
“洗面所を先に使って良いわよ”とトーマスに伝える。好意に甘えるかのように洗面所で歯磨きを済ませたあとで、フローラたちへ洗面所が空いたことを伝えた。
そして階段をゆっくりと上がり、そのまま自分の部屋に戻ってから明日の準備をする。忘れ物がないことを確認したら、部屋の電気を消してベッドに入り寝る準備に入った。
『今日は色んなことがあったな。……ふわぁ、何だか眠くなってきたよ』
一日の出来事を振り返りつつも、トーマスは眠りの世界へと飛び込んでいく……
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