最高の想い出と心の居場所
どこか冷たい光の霧の世界 日時および場所不明
今生きているこの世界は、一体何のためにあるのか? 今生きているこの世界は、一体誰のためにあるのか? その問いかけに対し、僕は心の中で必死に答えを求め続けてきた。
ふとした偶然からその答えを見つけるが、それは僕の心を切り裂き……僕の心をえぐる、フタを閉じ続けていた方が良い現実と真実。
すっかり頭が混乱してしまったトーマスにとって、亡き父リースと母ソフィーの言葉を、ただ聞くことしか出来なかった……
必死に泣き叫ぶトーマスに対しリースは涙をこらえつつ、彼のこれからの人生について語り出す。
【……大丈夫だよ。トムには私たちの変わりに、お前を愛してくれる人がいる。それもたくさんの人たちだよ。もうすぐ彼らはこの屋敷にやってくる。そして彼らが……トムの新しい『家族』になるんだ】
「……えっ? 僕の新しい『家族』? パパ、それってどういう意味?」
【ケビンやフローラ……そしてトムが本当の姉のように慕っている、三人の女の子たちだよ。彼らの言うことをしっかり守れば、必ずトムは幸せになれる……パパとママはそう信じているよ】
「そ、それってもしかして……ケビンとフローラ、そして香澄にメグやジェニーのこと?」
復唱するトーマスに対し、リースはただ無言で頷くだけ……
まだ色々と聞きたいことがあるトーマスだったが、二人はそろそろお別れの時間だと寂しそうに話す。二人が言うには、そろそろトーマスの意識が戻り始める時間なのだ。
【もっと色々とお話ししたいことがあるけど、今日のところはこれでお別れだよ。トム……また夢の世界で会おうね。愛しているよ!】
「パパ、僕も一緒に連れて行ってよ! 僕を一人にしないで!!」
だがリースはそれ以上言葉を返すことなく、同時に愛する息子の元を離れなければならない、自分たちの運命と不幸さを悔やむことしか出来なかった……
【トムがシアトル主催のイベントで、アメリカ史上最年少で名誉ある賞を受賞したこと……ママとパパは誇りに思うわ。だからお願い……あなたの作品やその才能で、多くの人に幸せや感動を与えて!】
「そんなの嫌だよ、ママ! またみんなで一緒に、ディズニーランドや水族館へ行きたいよ! 僕とパパとママの三人で!!」
トーマスは他にも色々と、リースとソフィーへ伝えたいことがあった。だが彼がすべてを伝えきる前に、目の前にいるリースとソフィーの二人は、少しずつその姿を消していく。
霧や幻影のように突如現れたサンフィールド夫妻の姿は、消える時もまた霧や幻影のようにうっすらと足跡を残すだけだった……
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