感動の再会と突然の別れ!?

              どこか冷たい光の霧の世界 日時および場所不明

 意識を失ったトーマスがうっすらと目を開けると、そこには信じられない光景をの当たりにする。トーマスの目の前には、数年前に他界したはずのリースとソフィーが優しく微笑んでいるのだ。何度も目をこすって確認するものの、そこにはやはり両親の姿がある。

 頭がすっかり真っ白になり、“とうとう夢が叶ったんだね!”と思うと同時に目に浮かべた涙をこぼしながら、ソフィーの胸に飛び込むトーマス。

「ママ……ママ! 僕……会いたかったよ! 今までどこにいたの!? 僕寂しかったよ!!」

愛する息子の髪や頬を、いつものように優しく撫でるソフィー。そんなトーマスのの表情もまた、これまでに見たことがないほど穏やかだ。


 これまでの苦しみや孤独から解放され、“やっと僕もパパとママの元へ帰れる!”と思っていたのもつかの間、自分の胸で泣いているトーマスを、なぜかそっと離すソフィーの腕。

「?? ど、どうしたの、ママ?」

“まさかパパとママも……僕のことを見捨てるの?”そんな強い恐怖が彼の心に襲いかかる。そんな彼の心の声を聞き届けたかのように、トーマスにとって耳を疑うようなことを語るソフィー。

【トム……私たちの可愛い子供。いい子だから良く聞いてね。今私たちは気を失ったあなたの意識の中へ入り、一時的に会話しているの】

夢の中で会話とは、まるでSFやフィクションの世界のようだ。

【……落ち着いて聞いてね、トム。今から数年前……私たちは家族全員で、ウォルト・ディズニーランドやシアトル水族館へ旅行に行ったの。それはもう……私たちにはだったわ】

「うん。僕もその時のこと覚えているよ!」


 まるで昨日のような出来事として、あの時の想い出を語るソフィー。だが楽しそうな表情から次第に笑みが消え、うつむき加減の影が密かに見え隠れしている……

【だけどあの時……私たちはケビンとフローラのお家へ向かう途中、事故にあってしまったの。幸いなことにトムは軽傷で済んだけど、私たちはその……で……な、のよ】

「! そ、そんな……」

改めて分かっていた事実とはいえ、ソフィーからの真実の言葉を聞いて、さらに胸が苦しくなるトーマス。

 そしてソフィーの隣にいたリースも、言葉の一語一語を強くかみしめながらも

【あの時“僕らはいつまでも一緒だよ”って約束したけど……ごめんね、トム。あの時僕らが交わしたあの約束はもう……守れそうにないんだ】

必死に弁解する。リースとソフィーの目から流れ落ちる滴が、床に水たまりを作っている。


 世界で最も愛する母親のソフィーに続き、父親のリースにまで一番聞きたくなかった真実を聞かされたトーマス。そんなトーマスを何とか説得しようと試みるリースとソフィーの想いや言葉は、少年の心に届くことはなかった……

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