再度結ばれる愛情と希望
ワシントン州 ハリソン夫妻の自宅 二〇一四年六月三日 午後三時三〇分
意外な形でハリソン夫妻の胸の内を知る香澄たち。自分たちの親代わりとも思えた彼らでさえ同じ恐怖を覚えていたことを知り、香澄たちは同情してしまう。
だがトーマスを救いたいという気持ちは香澄たちも同じで、“今は二人と言い争いをしている時でも、喧嘩している時でもないわ”と、本来持っていた気持ちを少しずつ取り戻しつつある。
「確かに今は私たちが喧嘩している場合じゃありませんよね。もう一度私たちで協力して、トムを探しましょう」
リビング全体に響きわたるような声を発した香澄の一言が合図となったのか、暗く沈みがちだった、マーガレット・ジェニファー・そしてハリソン夫妻の顔にも、少しずつ笑みがこぼれる。
「そうだね、カスミの言うとおりだね。今こそ僕らが心を一つにしないといけないんだ。みんな、僕らにもう一度力を貸してくれ!」
「……はい、もちろんです。みんなで一緒にトムを探して、そして今度こそ……トムを救ってみせるわ」
新たに意思を固め、再度トーマスを探し無事救うことを決意した一同。
自分たちの涙や心の痛みを勇気に変え、未来あるドアへと歩み始めた香澄たち。今の彼女たちなら、どんな困難がやってきてもお互いに協力しながら乗り越えていくことが出来るに違いない。
五人が再度結束を固めたことにより、香澄たちに新たな希望が生まれる。“トムを救うまで、絶対に諦めない”という強い気持ちが、香澄たちにおける何にも変えられない強力な武器となった。
いざトーマスの行方を探しに行こうとした矢先、少し気まずそうに
「あ、あの……ケビン、フローラ。みんなでトムを探しに行く前に、先に謝らせてください。あの時は私もつい感情的になってしまって、あなたたちを傷つけるような発言を。本当にごめんなさい」
マーガレットが言葉を荒げてしまったことを、ハリソン夫妻へ謝罪する。だが二人はそれを気にするつもりなどなく、
「いいえ、悪いのは私たちのほうだもの。メグは何も悪くないのだから、気にしないで。さぁ、一緒にトムを探しに行きましょう」
少しうつむき加減のマーガレットの頬に、白い手をそっと添えるフローラ。そのまなざしはまさに、子の安全を心から願う母親のようだ。
「ありがとう、フローラ。……よし、これで完全に迷いが消えたわ。さぁ、急いでトムを見つけるわよ」
「えぇ、これ以上トムに寂しい想いはさせないわ」
「もちろんです、香澄。私たちが協力すれば、どんな困難だって乗り越えてみせます。さぁ、行きましょう」
ここにきて自分を取り戻し始めた香澄たち。再び心を一つにした彼女たちはトーマスが行きそうな場所へ向かい、少年の行方をつかむことに全力を注ぐことを改めて誓う。
人の心は時に強い結束を生むが、同時にそれは
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