予想外な小旅行の行き先は!?

   ワシントン州 ハリソン教授の自宅 二〇一四年六月二日 午前八時三〇分

 トーマスが“自分たちに対し不信感を抱いている”とは夢にも思わない香澄たちは、“朝食後の外出先をトムに決めてもらいましょう”と提案する。その場にいたハリソン夫妻らも“いいね”と意見を合わせる。

 だがトーマスの正直なところ、“出来れば香澄たちと一緒にいたくない”という気持ちだろう。昨日までトーマスがあれほど慕っていた香澄たちをここまで嫌ってしまうのだから、人間の心とは不思議なものである。

 

 だが頭の良いトーマスは、“いきなり香澄たちの提案を断るとかえって自分が疑われるのでは?”と思う。そこで不信感をひとまず押し殺し、その場の流れに逆らうでもなく成り行きに身を任せることにした。

「僕が行きたい場所? 一つ行きたい場所があるんだけど……」

あくまでもトーマスはその気持ちを押し殺し、香澄たちと接している。

「本当は来月以降の旅行先にお願いしようと思っていたんだけど……僕、に行きたいな!」

“何とも子供らしい発想だな”とどこかほくそ笑むものの、彼の言葉に続いて、マーガレットも意見を述べる。

「動物園か……そういえば最近、行っていないわね。……私も行きたいわ。ねぇ、いいでしょう!?」

まるでトーマスのように、どこか子供っぽくお願いするマーガレット。

 

 動物園なら特に予約など必要無く、準備が出来しだい出発可能だ。そこで彼らはさっそく外出するための準備をはじめる。そんな中で最初にリビングへ到着したのは、“動物園へ行きたい“と言ったトーマス。

 おみやげを入れるためか、トーマスが持参したバッグの中身はほぼ空っぽ。中には折りたたみ傘やポケットティッシュなどが入っているが、それ以外には何もない。

「よし、出かけるための準備は整ったよ。後は……」


 頭の中で何か考え事をしているような、真剣な顔つきになるトーマス。するとそこへ、小旅行へ向かうための準備を終えた香澄も二階から下りてきた。

「あらっ……トム、もう準備は終わったの?」

「うん、僕はそんなに持っていくものないから。そういう香澄こそ、大丈夫?」

「えぇ、私も大丈夫よ。それにしても……こういう時になるとトムは、突然要領が良くなるわね。……まるでメグみたい!」

香澄の相変わらず几帳面で手際の良い性格に、相変わらず驚かされるトーマス。

「そ、そうかな? 別にそんなことないと思うけど……」

そう問いかける香澄に対し、“予め外出する時に必要なものは、いつもバッグへ入れているから……”とトーマスはどこか冷やかに答える。


 彼女たちに続くかのように、二階から次々と下りてくる一同。最後にマーガレットが到着したことを確認したハリソン夫妻は、

「さてと……みんな準備は出来たかな? それじゃ早速出発しようか」

香澄たちを自分たちが運転する車へと誘導する。

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