シアトルでドラマ撮影!?
ワシントン州 ハリソン夫妻の自宅 二〇一二年八月二〇日 午後七時一〇分
同じころデリバリーピザを受け取ったマーガレットとトーマスは、帰りが遅い香澄とジェニファーをリビングで待っていた。“午後七時〇〇分までには帰る”と言っていたが、七時一〇分過ぎになっても帰ってこない。
「遅いわね、二人とも。買い物途中に、どこか寄り道でもしているのかしら?」
「本当だね、メグ。……そうだ、二人のスマホへ連絡してみよう」
トーマスはポケットから携帯電話を出そうとするが、いくら探してもポケットに入っていなかった。“仕方ないわね”と思いながらマーガレットもスマホを探すが、同じ理由で見つからない。
「……あっ、そういえば僕、自分の部屋の机に携帯電話を置いたままだよ」
散歩から帰って来た後に汗をかいていたので、その時、自分の部屋の机に携帯電話を置きっぱなしにしていることを思い出す。一方でマーガレットは、コスプレ衣装に着替える時に自宅の鍵と一緒に机の上にスマホを置いてしまった。
「そう言われてみると、私のスマホもないわね……」
自分が行こうとする間もなく、トーマスが“自分の携帯電話を取ってくる”と言ったので、
“トム。私の部屋にもスマホが置いてあるから、悪いけどついでにそれも持ってきて”とマーガレットは伝える。
「メグの部屋の机の上だね。うん、わかった!」
そしてトーマスが一階のリビングを抜けて二階の階段へ上がろうとした時、外で何かが光っていることに気が付く。
『……んっ、何だろうあの光?』
玄関口へこっそりと向かいドアを開けてみると、外には赤と青の警告灯を点滅させる、パトカーが数台ほど停車していた。“何か事件でもあったのかな?”と思い、トーマスは急いでリビングで待つマーガレットの元へ息を切らしながら走る。
「め、メグ……大変だよ!」
珍しく息を切らしている姿を見て、“どうしたの、そんなに慌てて?”とマーガレットは声をかける。
だが気持ちが高ぶっているためか、喉から言葉が上手く出ないトーマス。“とりあえず、落ち着いて!”と興奮気味の彼をなだめる。
数回ほど深呼吸をするトーマス。そして気持ちが一段落したところで、“外にパトカーが何台も停まっているよ”と叫ぶ。
「えっ、それ本当なの!?」
トーマスのまさかの発言に、一瞬目を見開くマーガレット。
慌ててマーガレットも一階リビングの窓のカーテンを開けてみると、確かにトーマスの言う通り、外にはサイレンを振り子のように鳴らすパトカーが数台停まっていた。
とっさに“周辺で凶悪事件でも起きたのかな”と思い、とっさにテレビのスイッチを入れニュース番組をチェックする二人。だがどの放送局も、“ワシントン州やシアトルで凶悪事件が起きた”などの報道はされていない。
「もしかしたら、これからニュースで報道されるのかもしれないわ。もうしばらく、様子を見ましょう」
その後、“もしくは、ドラマや映画の撮影かしら?”と、独り言のようにつぶやく。
「もしかしてドラマや映画の撮影かな……わぁ、面白そう。僕ちょっと見てくるね」
“滅多に見られない撮影だよ”と、再度興奮気味のトーマス。
「あっ、トム待ちなさい。もう、香澄たちも帰ってこないし、一体どうなっているのよ!?」
だがマーガレットの声を聞くことなく、トーマスは元気よく玄関へと走っていく。ため息交じりに息を吐きながらも、マーガレットは香澄たちが戻ってくるのをただ待っていた。
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