企画書の整理
さて、「コンセプト」はおおまか決まっているはずです。このエッセイだと、「ターゲットの読者層は文芸系を目指す作家志望者」で「描写にまつわるコラム中心」で、「初歩は省く」となっています。
これ、「初心者は振り落とす」「ラノベ系志望者も振り落とす」ということでもあります。「タイトルの変更が必要」てのも後から出てきました。
私の段取りが悪く、原稿をある程度の完成品で揃えねば構成に入れないって事の大きな原因でもあるのですけども、もう一つ、「想定読者層に合わせた仕様」って部分があります。私はこれがたいがい、書いてる途中から思い出すとか、想定からズレちゃった、とか起きるんですわ。
よく指南本なんかにも出てくる「読者層」ですが、想定読者で決まる範囲ってものに、皆さん誤解がありませんか?
想定読者、読者層、これで変化する作品要素ってのがあります。
主人公の年齢、設定、特殊能力だのなんだののガジェット、ストーリーライン、文体、使用漢字、etc… て感じですかね。ほぼ全部ですね。これである程度、ジャンルやカテゴリまで決まっちゃいますね。つまり書きたい内容をどう伝達するのかの、その伝達手法そのものが読者の想定で決まるってことです。
「想定読者層に合わせた仕様」というのはつまり、そういう諸々です。
これを、普通はプロットの段階、早い人なら企画書の段階で整えてしまっていますが、これが私は、ある程度完成した原稿を前にしないと出来ないのだ、という事。
よく聞こえてくるのは、ジャンルはレーベルの違い程度でしかない、という言葉ですけども、違いますから。
読者層ってのは、人々を共通項によって纏めたそれぞれの集団と捉えた中での一つのカテゴリに属する人々って意味です。ジャンルはだから、それを好む傾向のある人々を基準にして算出した範囲規定です。境界辺りにある作品はだからはみ出したものもあるのは当然で、話をするなら範囲ど真ん中の作品を出せ、というね。これはサンプル数から共通の項目を多い順で並べれば出ますわという話。(ドンブリ勘定しか出来ないんで水掛け論になっちゃうのよ)
けれど、ラノベが中高生男子をターゲットにしているという基準で、主人公を10代の男子にするっていうのはよく聞く話だと思いますし、そのリクツは広く認知されていますね?
しかし、構成に関わっている「想定読者は中高生男子」というこの項目は、もっと深く作品の色々な仕様に食い込んでくるんです。
よく、作者が年配者でトウが立っていると感性の違いで作品は古臭く感じられる、という話が聞こえてきます。面と向かって聞くことはないんで裏側で、ですけど。
単純に主人公を少年少女にすれば読者層が中高生になるって話ではないんですよ、キャラたちの感受性がまずその年代であり、地の文の感性もまたその年代でなければならない、だから年相応のカテゴリで書いた方が良いとすら言われるわけでね。
けれど、ラノベなんかは何も10代の作家ばかりが書いてはないですわな、そういう作家さんは10代の感性を失ってないのかと言えば、そんな人ばかりじゃないですよ、ここにもカラクリがあったりするわけです。
年季の入った作家先生だって10代主人公の作品をバンバン書いてますでしょ、あるいは青臭い冒険譚だってガシガシ書かれるわけです。けれど、そういう作品ってたいがいは、その世界を眺める視点である地の文は、大人目線だったりします。
一人称で少年を主役にして書いてるケースだと、作家先生がなりきってるというよりは、息子の観察日記みたいな距離を感じ取れます。この視線が読者に安心感を与えたりする。話を追うだけの通常の読み方だと見過ごしてしまう最たる要素です。
先に記述したと思いますが、<語り手>の外側にリアルの<書き手>が存在するのだという話を思い出していただきたく。三人称だったら単純に地の文人格はキャラたちを見守る大人のスタンスで、一人称だったら主人公の思考でもある地の文の外側に、これをコントロールしている大人である作者の視線があるのだ、という事です。
この地の文の外側の視線、これは設定だとか世界観に現れてくる。大人が作った設定や世界観はやはり子供が作ったそれらよりも重厚ですし、リアルです。世界の意志というようなカタチで作者の実年齢は透けて見えてたりします。人生経験がね。
埋めようもなく経験値が違うからそういうものが現れる。代わりに、感性という面のフレッシュさは逆立ちしても取り戻せませんけど。orz
感性などは無いものねだりなので、多く年配の作家先生方が少年少女の話を書く時は、寓話的なものが滲んでしまいますわな。亀の甲より年の功、てヤツ。
これらも、読者層によっては受け入れられる層もあればウケない層もあるってわけで、ちゃんと自身を把握して想定読者の像は決めねばならないってことです。
同年代の感性で実年齢に近い世代を書くのか、目上の立場で見守るのか。
けど、ご安心クダサイ、年上目線で書かれる作品は世間一般ではウケがいいです、なんせ我が子を見守る親目線ほどポピュラーなものはないですから。普遍。
昔は、子供向けとなれば本当に大人は読まなかったものですが、今は普通に「大人も楽しめる」てのはデフォルトになってますからねぇ。子供の方でもどこかこの大人仕様の世界観ってのに慣れていて、普通に受け入れてしまう。
これを基準に見ると、ちょうどカウンターに当たるのがかの「セカイ系」やら「テンプレ系」なのだなぁとか、つらつらと考えてしまったり。たり。
「絵のない絵本」って子供にバカウケですが、大人が読んで楽しいかってと、ねぇ。
子供時代の世界の見え方とかそこで働く法則ってのと、大人になって知る本当の世界のカタチや法則ってのはまるで違っていた、そんな経験を思い出しますわ。
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