やってはいけないこと

 ラノベやWeb小説で主流のストレート文体と、文豪作品でお馴染みのなごり雪文体、としましょう、解かりやすく!


 書いてある通りの解釈しかない文章と、書いてある事を推測して読む文章。


 それぞれ利点があります。ストレート文体は解釈が分かれないので、いちいち立ち止まって文章一つに思考を回さなくて済みます。文字に煩わされずに物語に没入できる。物語がサクサクと動くように感じられます。


 片や、文豪文体、なごり雪文体では、一文一文を咀嚼して前後を意識しながらその意図を組み立てます。自分で解釈を発見する、という悦びです。これは本来ならストレート文との組み合わせも効きます。


 しかし、ストレート多用で読者が読み流すほどの文体となっていた時には、逆になごり雪文というものは使用不可になってしまうので、ご注意ください。

 その理由はもう説明も必要ないと思いますが、ストレート文が飛ぶようなスピードで読み込めるのは、解釈割れが起きないから、です。けれど、なごり雪文は、解釈割れをわざと引き起こしている文体なんです。水と油でドレッシングを作るには、両者のバランスが大事だという事ですので覚えてください。


 これに準ずるタブーなるものは他に幾つもあります。


 本来ならバランスさえ取れるなら使用可能なものが多いのですが、それには文章力が必要になってきます。

「過去に遡ってエピソードを繋ぐのは悪手」と言われます。しかしながら、卓越した文章力があるなら、過去から現在、またまた過去へ、あるいは別の人物視点へと、自由自在にエピソードを繋いでもダイジョウブなんです。文章力次第です。


 ちょうどいいと思って、本来はコレの紹介の為と5年も前の作品をこっちへ引っ張ってきたんですよ、もうプロローグから書き直さなきゃどうにもならないシロモノを。ほんと、ダメのいい見本ですんでよければ読んでみてください。実地に体験してみるのが一番ですんで。なぜダメか、を解説された見本を読む、それが一番。(笑


https://kakuyomu.jp/works/1177354054884757982


 フォローしてくださってる方がいらっしゃるのがほんと心苦しいんですが。過去と現在とまた過去と、という感じに行き来します、展開が。これ、私にそれだけの技量があれば無問題なんですけどね、明らかに技量不足で捌ききれてないんですわ。

 読みにくいだろうに、申し訳ないなぁと、ほんと申し訳なく思っとります。


 展開が目まぐるしく、一つひとつのシーンが急ぎ過ぎていて余韻がない、過去と現在とが飛び飛びになる弊害で、読者に余韻が生まれないのです。ワンシーンに割くべき文字数がまったく足りていない、展開が速すぎるせい、という事です。過去に飛ぶのが悪いのではなく、書ききれていないのですね。


 しかし、ただ文字数を増やせばよいという話ではないんです。それぞれのシーンはもっと文字を増やせるでしょうか? 増量に耐える内容でしょうか? 否です。

 描写を増やしたところで水っぽくなるだけでしょう。バランス的には、これはギリギリと見ていい。描写というのは書く内容によって付けられる限界があります。ストーリー的には王道のファンタジーで、未知の物語ではありません、だから仰々しい描写は出来ません。耐えるだけのストーリーではない、ということです。


 これが王道ではなく、よくあるストーリーでもなければ、もっと重厚な描写も許されるでしょう。推理小説でやったような何ページに渡る描写も出来たでしょうが、正直、テンプレにもありそうな物語です、ムリです。


 キャラクターの造形、ストーリーライン、それらが実存に近ければ描写は限りなく許されるのですが、そうでないならおのずと天井が出来てしまうのです。バランスが取れなくなります。キャラの性質と描写のバランス、物語の性質と描写のバランス、という具合です。


 描写に制限が加われば、自然と、構成の点でも制限が出来る、それが過去へのジャンプの制限を生みます。せいぜい冒頭から一回か二回が限度だったと思います。


 小説の構成というのは、描写もキャラも展開もぜんぶバランスで関連するんです。


追記:

 王道だとか、よくある話、テンプレっぽい話だから重厚描写は出来ないと書いたけど、意味が通じたでしょうかね。それらはつまり、「先が読める話」ってことなのよ。先がだいたい推測つくようなモノを、丁寧に描写してくどいくらいに書くってのはダメなのです。読者はイライラします、てのはハイロック氏とのヤツでも書いたよね。


 よく見るタイプのキャラ、よく見るタイプの展開、よく見るタイプの設定、よく見るタイプのエピソード……これらはそれだけで、描写量に制限かかるのです。て事。


 アニメのキャラ、漫画のキャラは、その特性上、どうしても記号化され、デフォルメが加えられてしまいます。これが「よく見るタイプ」となり、描写を制限させるんです。デフォルメした方が書きやすいのがまた罠でね。

 漫画絵アニメ絵がデフォルメだから、オーバーアクションでの表現になってしまうでしょ、さらに類型化が進むのよ。宿命なのよ。で、脳内で動いている小説キャラが実写かアニメかが、また重要になってしまうってワケです。


 描写したけりゃ「一人のリアルな人間」として書かないと、描写量制限が付くの。

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