キャラをベツモノに、個性を付ける⑤~参照の統一規格~

 昨日、お笑いの賞レース番組観たんよ。女芸人のヤツ。んで、その中に幾つか、『別の媒体のナニカを参照して初めて解かるネタ』てのがあったのだよ。ドラマとかでも最近は増えてきたじゃん、イイ男が部屋に居座ることになってどーたらこーたら、のヤツ。王道ね。それをまぁ、ダイジェスト状態で4分かでやって、顔芸で笑いを取るって感じよ。


 切り離して観たら、何が面白いのかサッパリ解からんネタだ、正直。


 これ、王道でよく知られた居候イイ男ネタってのを知ってる事を前提にお笑いにしてんのね。それ自体はいいのよ、ナイツのネタとかでも知ってる事を前提にボケかまして笑いを取るんだし、別に問題はない。


 だけど、この感覚を小説読む時にまで応用してんのがラノベとかWeb界隈なわけだよ。文字だけで表現するんで、普通の小説だってそういうトコはあるけどね、林檎をわざわざ描写はしないってのも、ゴブリンをわざわざ描写しないのも、同じなわけだ。林檎は不要だけどゴブリンは必要というのは、オメーのルール。

 これが困るわけよ、この、マイルールに過ぎんという事実が、ラノベやWeb小説ではモロに暴露されてしまって、ぼこぼことニュールールが出現して、個々勝手なマイルールでバラケちゃったのだ。普通の小説ではまだ統一規格っぽいのが残ってるけど。Web小説まで行くとほんとのフリーダム。


 知ってるかい? バラければバラけるほど、市場価値は下がるのだ。


 今や、この「参照前提の書き方」ってのはものすごいバージョンの広がりを見せている。ラノベもその波に呑まれている。だから、それに合わせねばならない、ラノベを書くとなれば。読者がそうだからね。(だからラノベ書きたかなかったんだ)


 もっと解かりやすく解説するなら、ある作品は林檎もゴブリンも描写しないがヒロインの容姿は描写する。別のある作品になるとヒロインもヒーローも容姿を描かない。もっと別のヤツは心情描写もなければ風景も書かない。だけど別のヤツはガッツリ描写してる、という感じで「書き方の統一感が失われる」わけよ。


 読者は自分に合うヤツを選ぶわけでしょう。元々、ストーリーとか設定の好みだのジャンルの好みだのあるけど、その上に文体の好みが入るわけ。いや、文体の好みも昔からあるから、この場合は参照の程度かな。

 他のジャンル小説ならある程度の統一基準があるわけよ、参照前提ってヤツには。林檎は描写なしでもゴブリンは描写しなければならない、だとかのね。基本の参照ルールね。

 だから選択肢はせいぜい中身そのものから始まるだけなんよ。けど、ラノベやWeb小説だとそれ以前の、単語の段階から始まってしまう、ってことよ。


 読み手は文句ないかもしれない、読むモンなくても別の遊びはゴマンとあるわな。だけど、書き手は、特に売り物としては、商売上のボーダーってのがあって、これを下回ってしまえば商売にならんのよ。市場があまりに小さいと商売は撤退だ。


 今、ラノベは急激にこのボーダーを割り込もうとしているのよ、あまりに規格が崩れ過ぎてしまってるから。全体で見れば変わりなく売れているだろうけど、それって薄利多売の典型に陥ってるだけで、作者個人はどんどん売り上げが細っていると思うのだ。出版は広がったバージョンの分だけ小部数で出せばいいだけだからね。デジタル移行でもっと顕著になるだろう。


 んで、ラノベで書くとなったら、まずどのバージョンに合わせた文体で書くのかの問題が来るわけよ。明確には描写の量とかだね、一般的には描写なんて中身に合わせて増減するもんだけど、ラノベは中身無関係に細かな階層があると見た方がいいわけでさ。ゴブリンは描写するのかしないのか、から始まるわけだよ。そこまで読者層が細切れに分かれてしまっているってことよ。


 んで、私のケースだが、今回、改訂にあたっては自社標準に戻そうと思っている。ラノベの文章としては人気がないかもだが、今さらだわ。(笑

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