冒頭・戦闘描写三種類の解説②
<俺TUEEE風ギャグテイスト>
勇者の振り下ろした剣は、まっすぐゴブリンの頭頂部へ叩き込まれた。こんなザコ程度は楽勝だ。美しい殺陣の見本となって散れ。
しなやかな刃の軌跡が敵を一刀両断に……空振り。盛大なフルスイングで勇者は軸足を中心に綺麗なターンを披露した。その姿はまさに雪原の貴公子。無意識にも爪先立ってしまうのは前世でやっていたスケートの名残か。
勇者が斬ったと思った、それは残像だ、厭らしい笑みを湛えて緑色の醜悪な化け物は彼の側面へと瞬間的に移動している。その表情は賞賛の微笑みかも知れないが、願い下げのギャラリーだ。彼のファン女性たちの熱い声援の代わりにもならない、醜いゴブリンの咆哮は声まで醜い。
ザコのくせに! 内心に吐き散らして勇者もまた身体を無理やりに横へと捻る。倒れながらにもう一閃、今度こそ優美な姿勢で放つ一刀が近寄る敵を両断に……空振り。うぎーっとばかりの歯軋りで地面を転げた。
ザコに追い込まれるブザマさが癪に障る、緑の小鬼と書いてゴブリンと読む! そんなザコ敵が重そうな戦斧を鋤か鍬の要領で叩きつけ、拍手代わりと地面を抉る。スタンディング・オベーションにしては乱暴だ。有難みもない。ほんとは勇者を抉りたいに違いない。
畑を耕やす要領で勇者をも耕やそうと目論んだゴブリンだが、突如襲い来た炎に顔面を焼かれ、その暴挙は押し止められた。じゅう、と美味しそうな音が響く。
「サンキュー、」
もがくゴブリンをサクッと胴切りに撫でてから、勇者は肘立ちに息を吐いた。
<解説>
ボツ原稿の方では色々とほざいてましたが、これ、サイテーですな。ヘタクソ。
特に、魔改造②を読んだ後にこれを読めば、どれだけスベってるか解かるというものです。まるきり悪い見本市。(笑
ギャグテイストと言いつつ完全にスベってますし、説明調だから、冗長に過ぎて鬱陶しいという域に達しています。この感覚を持てなかった方は直接、魔改造②を読んで、もう一度これを読んでみてください。
なんでこんなにつまらなく感じるのかと言えば、これは描写ではなく説明だからなんですけどね。説明調で文章をずーっと続けるとつまんなくなるんです。短いうち、ダイジェスト状態のうちは誤魔化せるんですが。
次はそれについて解説して、それから戦闘描写最後の一つに。
<コラム>
畑をたがやす要領で勇者をもたがやそうと目論んだゴブリンだが、突如襲い来た炎に顔面を焼かれ、その野望は潰えた。
この一文は、視点が捩れている悪文です。視点は勇者の背後なので、「その野望は潰えた。」はヘンです。感覚的にでいいので、この「ヘン」に気付けるようになればチョー便利です。いわゆる『視点ブレ』というヤツです、覚えてください。
ゴブリン側に感情が寄った語句なのですね、「野望は潰えた」が。
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