【改訂版】魔改造二種類!①
改訂版です、
『ハイロック氏が書いた、描写文を魔改造してしまいましょ~!(悪ノリ)』第二弾
https://kakuyomu.jp/works/1177354054884190039/episodes/1177354054884190456
『☆がつかない作家の苦悩』第二話より。
<引用>
勇者の振り下ろした剣は、まっすぐ、ゴブリンの頭上に向かっていったが、そこにはすでに目的の姿はなく、剣はただ空を切ることとなった。全く手ごたえのない虚空を切ってしまったせいで、勇者の体はそのまま前のめりに倒れ、体勢を崩してしまう。
その無防備なスキをゴブリンが見逃すはずもなく、まっすぐ勇者の背中に向けてそのたっぷりと質量のある戦斧に全体重をかけながら振り落とそうとするも、間一髪ゴブリンの顔面を、仲間の魔法使いによる灼熱の閃光が襲った。
勇者は態勢を立て直すと、魔法使いの火炎に苦しむゴブリンの胴体を、彼の剛腕から繰り出される最速の斬撃で一断ちにしたのだった!
<解説>
この描写文は、一般的なラノベやWeb小説によく見られるシンプルな描写です。普段からラノベを好んで読んでいる読者などには馴染みのある文体でしょう。馴染みがあるというポイントは非常に重要で、慣れた文はストレスを少なくします。
特徴としては、視覚情報が多く、動画的な情報を分解して描写に写したような感じです。
また、説明に近い文章でもあり、読者は自身で考えるまでもなく、すんなりと何が起きているかを理解できます。ちょうど格闘技などでのナレーターみたいな口調。
そして、読者自身のライブラリ依存が高い文章でもあります。解かっている前提で書かれ、解説はありません。
<ナレーター調>
勇者の振り下ろした剣は、まっすぐ、ゴブリンの頭上に向かっていった!
が、そこにはすでに目的のモノはない、剣はただ虚しく空を切る!
全く手ごたえのない虚空を切ってしまったせいで、勇者の体はそのまま前のめりに倒れ、体勢を崩してしまった!
危うし、勇者、大丈夫なのか!
その無防備なスキをゴブリンが見逃すはずもなく、まっすぐ勇者の背中目掛けて襲い掛かる!
たっぷりと質量のある戦斧が重そうだ!
己が全体重をかけ、ゴブリンが今、まさしくその凶悪な武器を、勇者に振り降ろそうと構えている!
間一髪!
ゴブリンの顔面を、仲間の魔法使いによる灼熱の閃光が襲った!
その隙に勇者は態勢を立て直す、
魔法使いの火炎に苦しむゴブリンの胴体を、彼の剛腕から繰り出される最速の斬撃が、一刀両断、真っ二つにした!
<解説>
こうすると解かりよいですな。テレビなどのナレーションは、「耳で聞いているだけでも理解出来るように」喋ってますんで、すごく理解しやすい文章になってます。
なんせ耳で聞いただけでも解からせないといけないわけですよ、読み返しで確認が出来ない上に、他人が読んでる文章なわけで、よほどに解かりやすい構成にしないと、リスナーは理解ができません。
解かりやすさで言えば、最上級に解かりやすい文章がTVのナレーターの喋りです。それに近い文章になっているわけですわ、Webで主流の文体というのは。
読者のライブラリに非常に強く依存する文章形態ではありますが、これは、ゴブリンも魔法使いも、灼熱の閃光という文が魔法を指すことも、読者はすでに了解していると想定できる場面ならば問題はないわけです。
先にあるはずの、この「了解」という部分を、作者と読者がどう認識しているかで変わります。ゴブリンならゴブリンを、その初登場時にどの程度、情報として伝達するのかという部分。読者のライブラリに丸投げなのか、ある程度は作者が誘導してイメージを統一するのか。
その情報固定のための描写が、この戦闘描写の特徴と一致しないと、読者には違和感と受け取られる可能性が高いのです。描写レベルの統一が問題になります。
よくあるWeb上の描写では、ゴブリンというものはもう描写されません。「皆が知ってるアレよ、アレ。」という扱いで、読者ライブラリに丸投げです。説明が成されない事で読者の方でも、自分のライブラリ参照で良いと判断し、手持ちの資料に照らしたゴブリン像を当て嵌めます。なので、読者間ではイメージの齟齬があったりもするでしょう。
ハイロック氏がエッセイの中で仰ってますが、これは漫画やアニメを文章化したようなものとも言え、それなら最初から漫画やアニメで作った方が早いのではないか、という意見はなるほど頷けるものだと思います。
んでは、描写密度を上げた文体で魔改造を施してみます。
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