「ミステリ」と「ホラー」と「ファンタジー」
「人間を書く」の話をしましたが、実はどんなカテゴリの作品も多かれ少なかれでは人間を書いたものだったりします。濃度の違い、要素の比重の違いなんです。
そんで、この「人間を書く」はすべての物語において、ベースとなる基本ですんで、この要素をおざなりにした作品は、面白くするのが大変です。
文学は100%「人間を書く」で凝り固めてもOKです。しかし、他のジャンルの主体要素でそれは非常に難しく、商業ラインを狙うのも困難です。好んでくれる読者がそれだけ稀少になるからです。
人にもよりますが、多くの読者はただひたすら風景描写が続くばかりの作品を面白いとは思わないでしょう。けれど逆に、台詞しかない作品はけっこうな需要があったりします。この一事だけでも、人間に需要があるのだと解かります。だからどのジャンルを目指すのであれ、「人間を書く」は大事です。
人が登場しないと面白くないんですね。←これポイント。
ミステリにはパズラーというジャンルがあります。新本格とかも入るかもですが、これは「人間を書く」よりも「謎解き」を重視したジャンルです。社会派というのには「社会問題を問う」が主題で人間描写より重視したものも多い。
パズル系の推理小説には、描写をこってりとはやらず、人物も深く掘り下げない、ラノベに近い軽い読み口の作品も多いです。読者が目当てとするものが「人間描写」ではなく、「謎解き」だから許されるということです。
登場人物が記号のようだ、とはその昔に推理小説がよく言われた事でした。
こういう評価を下す人の基準に沿う「人間描写」とは、すなわち、しっかりと描写がなされているという事です。もう、そうとしか言いようが……。(笑
しかし、文学ではないのですから、主目的が「人間を読ませる」ではないのなら、さして気にする問題ではないのですね。主目的がしっかり書けていれば。パズルなら謎解きが、ホラーなら恐怖が、しっかり書けてればいい。文学じゃないから。
だけど、これを逆に言うとなぜか反発がきます。
すなわち、
「ラノベは文学じゃない」と言うと、なぜかバカにされた気になるんですね。
カテゴリによる分類の話に過ぎないのでヘンに深読みするのは止めましょうよ。
「そんな事はない!」と言うから、じゃあ、と比較されてしまうんです。
あと、叙述トリックというのもありまして、これは描写を逆手に取る謎解きです。これであんまりライトな読み口の作品ってのは聞きません。いや、私が知らないだけかもですが。書いてみれば解かりますが、描写をびっしりやった方が騙しやすいんですね、だからだと思います。
描写は用途に応じて濃淡を決めて書くものです。その用途に、読者のとっつきやすさなんぞはあまり考えなくていいんです。
叙述トリックをやるならコテコテに描写するのが楽です。これを読者に合わせて読みやすくとライトにしてしまうと、すぐ見破られてしまうかも知れない。それでは本末転倒、本当に叙述トリックを求める読者は不満です。読みやすいと喜ぶ読者は、読みやすいを求める読者であって、本当には叙述トリックを求めていたわけじゃないかも知れない。そんな読者に向けて書くのは、本来とズレています。
自身の書きたいジャンルと、その読者たち、そこを見誤ってはいけません。
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