【例題作品・ラノベ】解説③

 では総合的な解説に移りたいと思います。

 これ、価値観の違いで読後感が変化します。


 まず、小説を「面白い/面白くない」で分けるのは、心のどんな感情でしょうか。いろいろありますね、あるタイプが感じそうな理由を箇条書きで挙げてみます。


「ぱっと見で文章詰まってて面倒そうだと感じた。」

「ちょっと読んで、まだるっこしい文章と思った。」

「しばらく読んだけど話がなかなか進まない。」

「ずーっとダラダラした展開で飽きる。」

「興味を引く要素が出てこない。」


 これは一部に過ぎません。


 次に、別のタイプが感じそうなものも挙げてみましょう。


「ぱっと見でスカスカな文章なのが解かるから。」

「ちょっと読んだが、幼稚な文章で読み応えがない。」

「しばらく読んだけど話が飛びすぎ、ざっくりし過ぎ。」

「ずーっと説明調子で臨場感がない。」

「派手なガジェットだけどキャラは人形劇。」


 だいたい先に挙げたものの反転型にしてみましたけど、解かりやすいっしょ。

 これは、価値観が違うってことです。


 トルストイが著書の中で書いてます。

「小説は、価値観を描くのだ。この作品の中で描かれる価値観は、猫は大丈夫という事だけなのだ。」

 深い言葉ですね。価値観を最大限引き出すために、手法もテーマもあらゆる事がそこに沿っているのが重要で、作品ごとに描かれる価値観に合わせた文章になっているという事は、賛否あるのも当たり前なわけです。


 繰り返しますが、「好き嫌い」です。


「面白い/面白くない」とは「価値観が合うか合わないか」に過ぎないので、文学系統が価値観的に合わないとか、ラノベ系統が価値観的に合わないとかなんです。


 価値観を描き出している、とするのが特に文学や文芸になるわけなので、ことさらその辺りで厳しいのは当たり前なのですな。そういう価値観なんで。そういう価値観を持たない側がとやかく言ってんじゃねー、て事ですわ。ハイ。


 ラノベにはラノベの価値観があり、それは様式美やら体系やらになってるでしょう。あるいはそういうものを壊してしまうという価値観かも知れません。それはそれを信奉する者同志で流通させればいいものであり、他の価値観を侵略しても不毛です。


 ラノベは解からん、あるいは、文学は、文芸は解からん、でスルーしておくのも手ですが、そこに異種の価値観があるのだから、それを分析したいのも人情ってものなのですよ。目くじら立てずに、ああだこうだも微笑ましいと思って生ぬるい目で見守りたいものです。


 文学・文芸では特に、他者の価値観に触れること、そのものが読書の醍醐味とも言われますんで、「人間を描く」とはすなわち、そのキャラの価値観を描くという事に他ならないわけですわ。猫は大丈夫、その価値観から膨大に膨らむものがある。行間と空白に、物語の描かれない裏側に、膨大に。





 文豪じゃねんだから。(ムリ――――――――――!)

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