Weihnachtsgeschenk
その手が傷つくことも
緑に映える赤い実と、芳しい香りの小さな花は清廉なる白。
繊細な手に滲んだ血を舐めて。
居間に据えた籾の木に、ひとつ、ひとつとオーナメントを飾って。
天辺は何にしよう?
星かリボンか、それとも愛らしい天使さま?
悩む姿、笑みを誘われたオレに
何を笑ってるの?
と問う君。
なんでもないよとただ微笑んで。
だって、こんなにも幸せだから。
キャンドルに火をともして、揺らめく灯を見つめる君は、こんなにもキレイ。
イルミネーションが煌めく街は、暖かなオレンジ。
どこか楽しげな人々の流れは、
寒いのに暖かくて、でも、
一人でいるのが寂しくなるような雰囲気。
キラキラキラキラ
ショーウィンドウにディスプレイされたクリスマスツリーには、
たくさんのオーナメントが輝いて。
君のツリーの方がもっと綺麗、なんて思いながら。
石畳の道は、まさに底冷えのする寒さ。
足元から這い上がってくる冷気は止め処なくて容赦ない。
そして、街を歩くオレの足取りは重くて。
こんな時期になっても、オレは君へのプレゼントを用意できていない。
煌びやかに飾られたショーウィンドウは、大切な人への模範を示して。
鞄、服、小物に
本当にプレゼントしたいものは、もうずっと前からあるのに。
何気なく、店に入って
当所なく、ショーケースを眺める。
陳列された、どんな石の、どんな細工が似合うだろうか――
「プレゼントを、お探しですか?」
白々しいくらいの笑顔で声をかけてくる店員は、
勝手に流行のデザインやオススメ、なんかを話し出して、オレは、
プレゼントしたいんだけど、サイズが分からないんだ、なんて曖昧な苦笑で答えて
逃げ出すようにその場を離れた。
周りには、二人連れで買い物を楽しむ者達も多くて。
でも、オレは
サイズくらい知ってるとひとりごちながら、一人で眺めている。
君の手。
白くて繊細な、やさしく触れる指先の
桜貝みたいな爪の形だって、思い描ける。
その手に似合う、石や細工は、きっと――
目を離せなくて、思わず首を振る。
どんなものだって、きっと君は喜んで受け取ってくれる。
でもきっと、これだけは。
困ったような、顔をするんだろうな。
そしてきっと、オレの望む指には填めてくれないだろう。
君が身に着けるのは、ピアスとロザリオ。
それだけだから。
だからいつも、何かってなると
実用的なものになってしまって
何が欲しい? って聞いても
君は何も要らないって、言うから。
ただみんなが、元気で、幸せで居てくれたらそれでいいから、なんて
本気で、心から言うものだから、オレはいつも途方にくれる。
オレがプレゼントしたいものは、決まってる。
それで、君が喜んでくれたら、
笑顔を見せてくれたら、それだけでオレは幸せになれるのに。
オレが、プレゼントしたいものでは、きっと
君を困らせるだけ。
雪がちらつき始めた空を見上げて、
あぁ、そう言えば。
ホワイトクリスマスになればいいねって
君は言っていた。
柊を飾って
キャンドルを灯して
甘いお菓子を食べて
光に満ちた雪の街を、窓から眺める。
目覚めれば、ツリーの下に沢山のプレゼント。
白い溜息を吐いて思い出す、
楽しいだけだったクリスマスは、いつの間に消えてしまったのだろう。
君の傍にいて、オレは確かに幸せなのだけど。
指輪を、プレゼントしたいと思う。
でもそれは、とても独り善がりな感情で。
オレはまたひとつ、溜息を吐いた――。
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