最終話 希望

 小池百合子は、幸福の絶頂にあった。

 選挙の結果は、「完勝」。

 自民170議席と、選挙前から100議席以上を減らす大敗を喫したのに対し、希望の党は240議席を獲得、単独過半数を占める第一党に。

 すでに維新、そして今回の選挙では敵対した公明からも、水面下で連立の申し出が届いている。さらに、進次郎率いる自民からの離党組も入れれば、3分の2も十分可能だ。

 ひとまず枝野を首班とし、必要な法改正が終わったタイミングで適当な議員を辞職させ、補選を行う。そうすれば、女性初の首相の誕生だ。

 そして、その先は――。


 ガタン。


 飛行機の揺れで、目が覚める。

 小池は、慌てて周囲を見回した。

 そうだ、自分はパリでの仕事を終えて、日本に帰っているのだ。

 そして、その先で待っているのは、今まで見ていた「夢」ではない。敗軍の将として直面する「現実」だ。


 希望の党は50議席と野党第一党にさえなれず。側近の若狭でさえ落選した。「選別」したはずの元民進党議員たちはどうせ、辞めろだなんだと言ってくるだろう。考えるだけで、どっと体に疲れが押し寄せる。


(それでも……それでも、小池百合子はこんなところでは終わらぬ……!)


 東京の灯が見えてきた。


『徳あるは讃むべし、徳なきは憐れむべし。怨敵を降伏し、君子を和睦ならしむること愛語を根本とするなり』(道元)

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希望の党・衆院選完全勝利への道【架空戦記】 慕居修人 @deathbodyshoot

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