10人のクローン殺人事件

ちびまるフォイ

見つけたぞ…両親のかたき!!

「犯人はこの星の中にいる!!」


「「「 な、なんだってー!? 」」」


「この星の中にいるっていうのか!」

と俺が言った。


「ちくしょう、いったい誰がこんなひどいことを!」

と俺が言う。


「クローンを殺すなんて許せない!」

と俺は訴える。


「みんな落ち着け、俺たちはみな同じクローンなんだ。

 こういうときこそ力を合わせて犯人を特定するんだ」


「そうだな、俺」

「さすがだ、俺」

「わかってる、俺」


「一人称が全部同じだと混乱するな……」


探偵役を引き受けた俺は目印用にハンチング帽子をかぶりパイプをふかせた。


「えーー、今回の事件は、とっても奇妙な事件ですねぇ。はい。

 クローンを殺す犯人の目的とはいったいなんでしょう。

 古畑クローンざぶろうでした」


「いや探せよ」


さすが俺。ボケに対してのツッコミが早い。


「ふむふむ、凶器はこのツボのようだな……。

 見ろ! こんなにべったりと指紋がついているぞ!!」


指紋を検出した。これで犯人特定ができる。


「さぁ、この指紋のやつは出てこい!!」


クローン全員が前に出た。


「いや、俺たち10人全員クローンだから指紋も同じだし……」

「1人死んだから9人な」


「ぐぬぬ……」


指紋を取っても個人を特定する方法がない。

俺たちはみな同一人物なのだから。


「そうだ! アリバイ! アリバイを聞いていこうじゃないか!」


「その時間はずっと部屋にいたよ」

「その時間はトイレにいたね」

「その時間は現場にいたよ」


「お前だーー!!」


「ひぇぇ!!」


怪しいクローンをとっちめようとしたところ9人の中に紛れてしまった。


「ちくしょう! どこにいった! 同じ顔だからわからない!」


アリバイのない怪しいクローンがいたものの、

どれが誰なのかわからなくなってしまった。これでは捜査もへったくれもない。


「よし、みんな。背中を出してくれ」


「何する気だよ、俺」


「クローンだから識別できない。番号を書いてお互いを識別しよう」


油性ペンを出すとクローンを並ばせて数字を振っていくことに。

額にしなかったのはせめてもの情けというか、みっともないというか。


「探偵役の俺は1番だ。はい、次」


「君が2番」

「君が3番」

「君が4番」

「君が5番」

「君が6番」

「君が7番」

「君が8番」

「君が9番」

「君が10番」



「……ん?」


なんで10番? 1人死んだはずじゃないのか?


他のクローンたちは気付いていないかもしれない。

俺だけこの事実に気が付いてしまった。


――誰も死んでない。


「おい1番、それで犯人は何番なんだよ?」


「ええと、それは……」


どうしよう。

このままでは探偵役に立候補した俺の大失態になる。

クローンたちから人騒がせだとタコ殴りにされても文句は言えない。


こうなったら……。


「ふむふむ、おやおや!? これは……!!」


「なにか見つけたのか、1番」


「割れたツボの近くに被害者ではなく加害者の血が混じっています!

 きっとツボを割ったときに指を切ったのでしょう!」


「でも指を切った人なんていないぞ?」


「ええ、きっと回復したのでしょう。

 クローンである俺たちの回復力なら浅い傷の治癒はすぐ終わる。

 ……しかし!!」


俺はついにパイプもハンチング帽子も脱ぎ捨てた。


「5番!! あなたの背中に文字を書くとき、わたしは見た!!

 お前の指にある傷を!!」


「おのれ! 同族殺しの5番めーー」

「生の喜びを奪いやがって許さんぞ!」

「クローン失格だ! とっちめろーー!!」


「ふぅ……万事解決だ……」


とっさに"クローンは回復する"なんて設定を作ってしまったが

そこは強い言葉にコロリと騙される俺なので信じてくれた。

5番には悪いがこのまま人騒がせなクローンとつるし上げられるよりはいい。


もうこんな目立つ役回りは勘弁だ。

クローンは同じ顔の中に埋没しているくらいがちょうどいい。


俺はクローンの中にまぎれた。




すると、肩をたたかれて振り返ると同じ顔。


「よぉ3番。次はお前が死体役をやるといい。

 1番がまたテキトー推理でクローンを減らしてくれるはずさ。

 お前だって数を減らして、クローンではなくオリジナルになりたいだろ?」

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