緑に蝕まれている。
「緑は優しい色。
しかし、瞳に宿せばそれは嫉妬の炎と変わる。
私を蝕む緑色の炎。それを消すには貴方が邪魔だった。
貴方さえいなければ、こんなに燃え上がることはなかったのに。」
私は、サッカー部の先輩、川根悠紀先輩が好きだった。
高校に入って、優しくしてくれて、優しく笑ってくれて、私はすぐに好きになった。真っすぐで、青い春がやってきた。
でも、先輩は渡瀬青菜と付き合った。
それだけならまだよかったの。先輩が幸せなら。
でも。交際を始めてから先輩は冷たくなったし、笑わなくなった。
なんだか、様子がおかしかった。歪んだようだった。
きっと、あの女が。
一目見てすぐわかった。あの女は深い闇を抱えてるって。
その闇がきっと先輩を蝕んでいるの。
憎い、憎い、憎い憎い憎い。
汚い汚い汚い汚い汚い汚い。
そう思ったら最後。私は嫉妬で包まれた。
全部、渡瀬青菜が悪い。だから、渡瀬青菜にも苦しみを。
「…鈴掛、先輩ですよね。」
「…うぇっ、あっ、うん、そうだけど…えっと…?」
わかるよ。渡瀬先輩。
貴方がこの人のこと好きだって。見てたらわかる。
だって、私も恋してるから。恋はよくわかる。
「鳴海、愛瀬です。」
「鳴海さん、えっと、なんか、用ですか?」
戸惑いを隠せない様子。
「先輩と話して見たかったんですよ。」
「…ねぇ、えっと、どうして、私と?私貴方となんの関わりもないけど…。」
「話してみたいの。」
戸惑いで円を描く先輩の瞳を覗き込んで逸らさない。
「あ、の…」
「先輩は、渡瀬青菜さんと仲がいいです。」
「青菜ちゃんの後輩、ですか…?」
「先輩は渡瀬青菜さんのことが好きです。」
「えっと…」
「先輩は渡瀬青菜さんを奪っていきそうな川根悠紀が憎い。」
「…。」
「先輩は渡瀬青菜さんに愛されたい。」
段々と先輩は言葉を失い、目を逸らしたまま喋らなくなる。
でも私は構わずに続ける。貴方の目を見て逸らさない。
誰もいない廊下に、私の声だけがこだまする。
「先輩。私、渡瀬青菜さんに愛される方法を知ってますよ。」
「貴方は、なんなの…?」
「先輩、渡瀬青菜さんに愛されたいんでしょう。」
「青菜ちゃんがどうかしたの…?ねぇ。」
「先輩、そんなに渡瀬青菜さんが好きならもっと川根悠紀先輩を嫌いになっちゃいましょうよ。」
「感情のまま生きるのがいいんです。」
「先輩は、自分を隠しすぎている。」
「先輩、ほんとは貴方は渡瀬青菜さんが欲しい。」
「それは誰にも言えない。」
「いいですよ、私に言って。私だけは貴方の理解者。」
「何かあれば来てくださいよ。」
「…じゃあ、失礼しますね。」
貴方が好きな鈴掛先輩を、ぐちゃぐちゃにしてしまえ。
すこしずつ毒を飲ませて、いつかころしてしまえ。
私が好きな先輩を殺されたように、貴方の好きな先輩を殺してあげる。
歪んだ青の歌。 和食が美味しい。 @3939411
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