第15話 童話
私は
良く手入れされた庭が窓から漏れた光で、
ガラスドアが開いて、ライネルト少佐が外に出て来られた。
「どうした、少尉。
「はい、少々」
「はは。馬鹿騒ぎに思えただろう?」
「はぁ……」
「新聞班の方はどうかね? もう一人前かな」
「いえ。戦地から送られて来る記事の校正で、毎日てんてこ舞いです。他にもお茶くみとか何やら、雑用もこなさなければならず」
「そうか」
「ええ。田舎を出る時は、最前線に赴くんだとばかり
「行きたいかね、最前線に?」
「はい!」
と、私は酒が入っていたせいか、力強く答えた。
「ふむ……何か理由でもあるのかい?」
理由。それは。
「少佐はスネグラーチカの事を御存じでしょうか?」
「……」
と、少佐は途端に目を丸くなされた。
「スネグラーチカの事を
「いえ、偶然に。本当に、
「どの程度?」
「スネグラーチカが王国や帝国の脅威になるだとか、国民の耳に入れてはならないだとか。冒頭の、ほんの数行だけを」
少佐は何も返事なさらない。庭先を、その遥か先を見つめられているようだった。
「スネグラーチカとは何なのですか?」
「何だと思う?」
「敵の新型機ですか?」
「……」
と、少佐は
「ヒイラギウムのような新元素?」
全く微動だにしない。
「スネグラーチカ……雪娘。ロシアの民話に登場する、ジェド・マロースの孫娘。その髪は美しく、白く輝く」
私は舞台上で、一人芝居を演じる役者のようだった。
「最後は、夏の儀式で、溶けて消えてしまう」
私は改めて少佐に向き合った。
「スネグラーチカとは一体何なんです?」
「知りたいかね?」
「はい」
「秘密を守れるかな?」
「私が、ある瞬間に対して……
「もう君は私を縛り上げてもいい」
少佐に先に
「あはははっ」
と、少佐は無邪気に高笑いされた。
「よし! では、君に話して上げよう」
私は息を飲んだ。
「スネグラーチカの話を。雪原のメルヘンを……」
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