第5話 尋問
「入りたまえ」
「御呼びでしょうか、班長殿!」
「……」
バイエルン陸軍省報道局新聞班長、ヴィルヘルム・エヴァルト少佐は椅子に
「シュライベン少尉。君は何を見たのかね?」
「あっ……その……」
「ん?」
「き、機密文書を……」
「そこには何が書かれてあった?」
「えー、スネグラーチカに関する詳細と書かれていました」
「その先は読んだかね?」
「冒頭だけで。国民の耳には、という所までであります」
「ふむ」
班長は机の上に置かれた私のタブレットを軽く
「で、君は何を見たのかね?」
「ですから機密文書を」
「シュライベン少尉。君は何を見たのかね?」
私の言葉を
「いえ、何も見ておりませんっ!」
「よろしい。全て忘れてしまうのだ、シュライベン少尉」
「はっ!」
「下がって、任務を続けたまえ」
「はっ!」
と、私は反転しかけたが、そうともいかない。
「ん、まだ何かあるか、少尉?」
と、怪訝そうに班長が問うた。
「私のタブレットを。それが無いと仕事になりません」
「んん……よし。ウッベン大尉に書類を作ってもらって、主計課から新しいタブレットを受け取って来るのだ、少尉」
「はっ!」
私は何とか難を逃れたが、朝から数時間掛けてやっつけた校正を、また一からやり直さなければならなかった。
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