第3話 校正

西暦2118年3月29日の火曜日、私はバイエルン陸軍省内の報道局新聞班の一室で机にかじり付いていた。只今、校正の真っ最中なのだ。

各地の戦線に出向いている新聞班員達から送られてくる記事の中から、実際に新聞に掲載する文章の誤字・脱字を正すのが私の現在の主たる任務である。

「あぁ、ティル。コーヒーを」

「はっ!」

他の部局の大抵は雑用をこなす従兵が居るのだが、我が新聞班は就労人口の乏しさの影響を諸に受けていた。そのような者は存在しない。班員達の飲み物を給仕するのも、私の任務の一つなのだ。

給湯室から戻って来ると、別の班員から矢継ぎ早に命令が下る。

「ティル、コピーを頼む」

「はっ!」

「ティル、これを法務局に」

「はっ!」

少尉とは名ばかりで、完全に一兵卒扱いなのであるが、班内で一番下っ端なので仕方がない。あと半年待てば何も知らない殿が入って来る。それまでの辛抱だ。

憤懣ふんまんやるかたない気持ちを抑えて、用事を済ませた私は自分の机に戻った。校正の続きを……

ディスプレイをふと見ると、メールが一つ届いているではないか。差出人は知らぬ名だ。まぁ、いい。気にせず開いてみたが、添付ファイルのみである。今一度開いてみたのだが、私のタブレットに映し出された画像は書類の類なのだが、上の方に次の二文字が印されているのがはっきりと見て取れた。

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