第3話 夏祭り

 屋台が立ち並び、いい匂いが立ち込めるなかを人が浮かれながら歩いていく。花火が始まったのか遠くからどーんっ!という音が響いてくる。

「夏祭りかぁ。」

ポツリと僕は呟いた。夏祭りは憂鬱だ。ふうっとため息をはいていると、

「なんだ、元気ないな。」

知り合いのおじさんに声をかけられた。

「まだあの子のこと気にしてるのか?」

おじさんは聞く。

「そりゃ、気にしますよ。だって僕のせいで…。」

そこから先は言葉にならなかった。一年前大好きだった彼女が突然消えた、それも僕の目の前で。しばらく無言の間が流れる。その時だった。突然キラキラ揺れる空を裂き、丸くて白いポイがこちらに迫ってきた。あのときと一緒だ!これに近づけば彼女に会えるだろうか。おじさんがパクパク何か言おうとした。しかし、それは僕の耳には入らない。その、ポイに体を持ち上げられ、僕は空を舞った。

 

「ママー、金魚さん取れたよ!」

そんな幼い子供の声が響く。

「わぁ、みっちゃん上手だね。」

優しい声が少女を誉める。屋台のおじさんが水の入った袋に僕をいれた。よかった。これ以上外にいたら干からびるところだった。ほっとため息をはき、僕は水の中を泳ぐ。自慢のヒレが水の中で舞った。

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短編かきため 風音 @Kazane0729

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