第2話「電車、遅延」

 駅の階段を息をきらせながらかけ降り家へ向かうサラリーマンで込み合う改札を駆け抜ける。ちらりと、左腕にはめた腕時計に目を落とすと時刻は4時。彼女と約束していた時間から一時間も経過していた。待ってくれている保証はない、それでも行かないとっ!

 そもそも、こうなった発端は昨日の夕方に遡る。その日僕はいつものように帰宅し、家でごろごろしていた。そんなときにバイトしている居酒屋の先輩から電話が。人手が足りないから来てくれ、とのことだった。渋々向かったがその日は確かに客が多く、しかも酔いつぶれたりする人もいて大変で家に帰れたのが夜中の3時。結果彼女と会う約束があるにも関わらず、起きたのが昼の2時だった。真っ青になりながら慌てて電車に飛び乗り、今に至る。

 約束していた駅前の広場についた。息を整えながら辺りを見回す。待ち人は、いない。あぁ、どうしよう。僕はそのまま広場のベンチにへたりこんだ。どれくらいそうしていただろうか。ふいに、名前を呼ばれたきがして顔を上げると、

「遅くなってごめん!」

帰ったと思った彼女が目の前にいた。

「え。」

思わぬ出来事に言葉が出てこない。

「列車遅延してて…まさか待っててくれるなんて!」

ただ、1つ言えるのは、

-列車の遅れも悪いもんじゃない-

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