短編かきため
風音
第1話「レストラン」
カタンッ
静かなレストランにスプーンが落ちる音が響き渡った。続いてドサッと何か重い物が倒れる音。
「キャーっ!!」
やや遅れて悲鳴が上がる。床に男性が白目を向いて倒れていた。おっと、これは出番か。僕はさっと立ち上がる。遠巻きに眺める人々を見回し、
「皆さん、落ち着いてその場から動かないでください。」
「あ、あなた、確かテレビで…。」
近くにいたおばさんが驚いた顔でこちらを見る。
「はい、名探偵の柚木と申します。皆様、このレストランで起きたこの事件私が見事解決して見せましょう!」
パチパチと拍手が上がる。
「まず、奥さん、あなたにお聞きします、この男性が食べていたのは?」
「カレーライスですけど…。」
「ふむ、他にカレーライスを食べた方は?」
シーンと沈黙が降り、皆顔を見合わせ、
「うそ、カレーライス? 」
「えぇ、マジかよ…。」
ざわざわと囁き会う。食べたのか食べていないのかどっちだ?まぁ、いい。とりあえず、
「すみません、カレーの鍋見せていただいても?」
「え、えぇ、まぁ。」
店主は探偵を厨房にいれ、カレーの入った鍋の蓋を開けた。いい匂いが厨房に広がる。いかん、お腹がすいてきた。
「この調理をしたのはあなたですか?」
「いえ、娘です。」
さっと横にいた女性を指す。
「なるほど、他に鍋に近づいた方は?」
こっちはやっとご飯にありつけたと思ったところで仕事が入ったんだちょっとくらい味見してもいいよな?
「いえ、いないと思います。」
パクっ…。こらえきれず、俺はカレーを食べてしまった。うっ…。こ、これは…。探偵は突如苦しみだしそのまま床に倒れ付した。その時だった。死んだはずの男性が突然起き上がった。そしてポツリ。
「なんてひどい味なんだ…。」
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