自由散文詩掌編『包まれたなら』

箱庭にて

奇跡と運命が混合する不思議な世界の話

それはそれは大変珍しい世界でした

人の心を支えるものはなく

人の心を救うものはなく

人ではないものを祀る世界

そこには、そこにしかない約束があり

それには、それにしかない契約があり

一長一短と良いところも悪いところも含めて

調整された世界でした

暮らす人々は短命でしたが

死もまた救いだと思っていましたので

短命であることを気にする者はいませんでした

停滞することもあれば微速、全速と

皆々違うことを認め合うこともあれば

排他することもあり、それもまた差し引きある事柄です

今日もその世界は通常運転です

生き抜くことができた者もいれば死に絶える者もいます

そして何より可笑しいのは

その世界にいる人間が、この「世界」には、その「世界」しかないと思っていることでした