機巧操兵アーカディアン
はじめに
リアルを砕け、『機巧操兵アーカディアン』
かつて
しかし、氏の母は死んでなどいなかった。
創作なのである。
そして、その後も何度か母が死んだ句を詠むのだった。
母親が存命と知った周囲は怒ったが、創作は自由なのだった。
さて、おわかりだろうか?
これが『リアル』と『リアリティ』の違いだと自分は思っている。
俳句を見た誰もが『ああ、寺山修司君の母上が……悲しい!』と香典を持ってくる。そうせざるを得ない作品だと思いこんでしまったのは、リアリティがあったからだ。逆に、リアルはというと『実は母親は死んでいない』という、身も
創作を楽しむ上では、リアルは必要ないどころか無用の長物でさえある。リアルは
リアルそのものは決して見せてはいけない。
リアルを忘れる程のリアリティをこめて、作品の全てで華麗に
ここは難しい話だし、自分でも上手に説明できてる自信がない。ただ、リアルな物語を書けば面白いのではと、誰もが最初は考える。そして、大抵は失敗する。だが、それは終わりではない。創作は常にトライ&エラー、リアルな作品を書いてみなければ、本当に誰もが欲するリアリティはわからないものなのだ。
さて、
この物語は、先程言ったリアルとリアリティの関係性を、非常に
アーカディアンでこだわりを持って設定されているのは、操作だ。
ロボットのデザインや作品の世界観、そしてSF考証や設定……それらのもの以上に、ロボットのコクピット、操縦方法、操作コンソール等が徹底して考え抜かれている。一見するとそれは作者の自己満足的なものに見えるかもしれない(自己満足そのものに対しては、自分は悪いことだとは思っていない)ただ、そうして氏の中に完璧にロボットの操縦方法が確立しているからだろうか? 作中の主人公が直面する全てがリアリティを持って見えてくるのだ。
主人公はタイトルと同名の機巧操兵アーカディアンというネットゲームで、世界ランクのチャンピオンである。しかし、そのゲームは実際に秘密裏に開発されていた人型機動兵器のシミュレーターのようなものだった。
そして、不幸な事故から主人公は本物のロボットに乗って戦争に巻き込まれるのだ。
この導入、
王道を
で、普通ならばゲームチャンプの主人公は、即座にエースパイロットになるのだが……ゲームと違い、実際のロボットには加速時の
ここで、天城リョウ先生が綿密に作り上げた操縦方法の設定が生きてくる。
レバーとペダルといった、具体的なコクピットの仕様を事前に考え抜いていた。
だから、それが同じロボット実機とゲームで、片方にしか存在しないGのドラマが光るのである。
また、この操縦方法については前後左右やロール、ピッチといった氏のこだわりの設定が存在する。それを読むことができるが、読まなくても物語にはスムーズに入っていける。これで、氏が『物語のための設定』を作りこそすれ『設定のための設定』はないなと感じた。勿論『設定のための物語』などという本末転倒なものとも違う。
これが、氏が作品に込めたリアリティであり、それは上手く機能している。
ゲームチャンプがそのまま現実でも腕前を発揮してエースパイロットになる……それもまた、娯楽の正しいありかただろう。だが、それを最終的に描くために、この物語には操縦方法を元に徹底して描写されたリアリティがあるように思うのだ。
さて、当たり前だが自分はアーカディアンが好きだ。
作品もそうだし、日頃から親切に接してくださる天城リョウ先生には、とても感謝している。それはいわゆる
創作者は人格者である必要はないし、人格が破綻してても名作は生まれてくる。
作家性と作家の人間性は全く別のものである。
でも、どっちも好ましいものだったら、それはラッキー!
そんな訳で、アーカディアンの二次創作も
ゲームという娯楽は、そのバランスが絶妙に、そして巧妙に調和していなければ成立しない。だから、ゲームと同時に存在していたことで、アーカディアンのロボット達は個性的な
だが、作中のキャラを通じて自分が常に思っていることを代弁してもらった。
ロボットでドンパチ戦争をする、そんなことは創作物の中で娯楽に閉じ込めておきたいものだ。奇しくも先日、国連で初めて『AIロボット兵器の規制に関する議論』が行われた。ゲームの世界からもう、ロボットは飛び出そうとしているのかもしれない。
・機巧操兵アーカディアン(天城リョウ)
https://kakuyomu.jp/works/1177354054882206044
敬称略
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます