十二 これで、伝わる?
僕は何も着ないままで、ベッドで仰向けになっていた。とうに観念しているのだから、柔らかな疲労を交えて四肢に滲む充足感に、
僕は身を
南水はやはり裸で、僕の腰の近くで足を崩して座っている。結った髪は、結局、今の今まで
何よりではあるが、しかし、互いに感じる良いに僕が貢献できたのは、ベッドがそこにあるだろうと場所を変えるくらいで、それ以外は本当に何もしていない。南水のおかげで心地良く届くバラードに感性を預けながらも、つい付言する僕はまだ未熟だろうか。「あえて言えば――」尽くして嬉しいの
南水の指は僕の物から離れない。僕は天井を向いたまま、「あはっ。」笑う声だけで南水の表情を想像した。「話聞いてさ、あたしまだ結真とキスもしたことないんだって、思ったら余計だめ。頭の中、真っ白。」手で
手遊びが減り、口づけが続くようになった。さらに唇を穏やかに被せて、器用にも、南水はそのままで喋った。撫でる息が僕の心地を刺激した。「良いんだけどさ、でも、
僕は半身を起こした。南水の金髪を軽く
花凛の住むアパートの集合ポストは灯下にあるゆえに、こうして夜になると、蛾を始め、
花凛の部屋は二階の半ばで、すぐ前の廊下に立てば、ここにもぴったり頭上に蛍光灯がある。明るくて嬉しいと思ったことはない。一階で光に虫が群がるなら、二階も大差なく、鍵を取り出してから、虫を嫌がる花凛のため、ドアに張り付いていた蛾を払い、なお注意しながらドアを開けた。
勝手を知る家であれば、横着をして、入っても明かりは点けず。洋間へ入る戸の空き間から漏れる光だけで、どうにかできる。まだ花凛はバイト先にいる時刻で、
洋間へと入り、即時、勇奈と目が合った。誰かが帰宅した物音は聞こえていたはずで、昨日、花凛と連絡を取った時刻からすれば、まず僕で間違いないと思ったろう。そのうえで、すぐに開くはずの戸を見つめていたのか、どうか。勇奈はちゃぶ台の上で自分のノートパソコンを開き、指はキーボードの上にある。パソコンの背面の隅に貼ってあるロックバンドのシールは、今この時、僕の視界では全く存在を失い、感じられなかった。
勇奈と目が合う。僕にとっての正面に顔が据えられている。家出をするのに
僕がまだ、勇奈に恋をしていると思い知るには、足りた。
抜けぬ刺として勇奈への恋情はあって、確かな実在があると知れた。僕の
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます