番外編 にもののそのご
「かぼちゃの煮物?」
がらにもなくきょとんとした顔をするロウに、17番はトシヤから託された煮物を手渡した。
「あの若造からのおすそ分け、だそうです。クッキーはきっとあなたに合わないからだろうから、と」
「なるほど、さてはかぼちゃを余らせたな」
ロウはいそいそと紙袋の中のタッパーを取り出して、その蓋を開ける。
「別にクッキーでもよかったんだがなあ」
そうやってぼやきながら、丁寧にもつけてあった箸を割ってかぼちゃの煮物を口に運んだ。
「うん、うまいな! 流石はトシヤだ」
そんなロウを見ながら、17番はトシヤに言われたことを思い出していた。
ごくたまにあの男からはネコとしての幸せについて問いかけられることがある。だがそんなことは大きなお世話だ。私は現状に満足しているし、あの男とネコのような甘ったれた関係になるつもりもない。だけど――
上機嫌にかぼちゃの煮物を頬張るロウを見て、17番はふっと頬を緩めた。
――あなたの幸せが私の幸せです、マスター。
17番の視線に気づいたロウは17番を見て――嬉しそうな声を上げた。
「珍しい。今笑ったな、17番」
「笑ってません」
「責めてるわけじゃないぞ。なんだ、たまには笑ってもいいんだぞ」
「笑ってません、マスターの見間違いです」
(おしまい)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます