番外編 にもののそのご

「かぼちゃの煮物?」


 がらにもなくきょとんとした顔をするロウに、17番はトシヤから託された煮物を手渡した。


「あの若造からのおすそ分け、だそうです。クッキーはきっとあなたに合わないからだろうから、と」

「なるほど、さてはかぼちゃを余らせたな」


 ロウはいそいそと紙袋の中のタッパーを取り出して、その蓋を開ける。


「別にクッキーでもよかったんだがなあ」


 そうやってぼやきながら、丁寧にもつけてあった箸を割ってかぼちゃの煮物を口に運んだ。


「うん、うまいな! 流石はトシヤだ」


 そんなロウを見ながら、17番はトシヤに言われたことを思い出していた。


 ごくたまにあの男からはネコとしての幸せについて問いかけられることがある。だがそんなことは大きなお世話だ。私は現状に満足しているし、あの男とネコのような甘ったれた関係になるつもりもない。だけど――


 上機嫌にかぼちゃの煮物を頬張るロウを見て、17番はふっと頬を緩めた。


 ――あなたの幸せが私の幸せです、マスター。


 17番の視線に気づいたロウは17番を見て――嬉しそうな声を上げた。


「珍しい。今笑ったな、17番」

「笑ってません」

「責めてるわけじゃないぞ。なんだ、たまには笑ってもいいんだぞ」

「笑ってません、マスターの見間違いです」



(おしまい)

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