たとえばこんなことを想う

灰褐色の建物の小路を左へ曲がると

そこにはきっと小さな店があり

曇りガラスの扉をくぐると

そこには緑黄色の鱗の龍が

眼鏡越しにこちらをちらりと見て

すぐにまた丸いものを磨いている


丸いものを磨いて磨いて

目を射るほどに輝いて輝いているのに まだ

磨いて磨いて磨いて

ついにそれは光の珠となり

ぱあん

虚空に散る


龍はほうっと息を糸のように紡ぎ

眼鏡を押し上げ

頬杖をついて

また息を紡ぎ

ちょっとだけ鼻先を掻く

その鼻先に光の塵がひらひらと舞いつつ

龍に微笑む


遠くで大砲が爆ぜる

建物が燃え上がり崩れる

たくさんの人が魂を失う

がらがらと戦車がすべてを踏みつぶす


龍は息を紡ぎ

光はそっと微笑む


大地が消える

天空も消える

それでも龍はみじろぎもせず

息を紡ぎ

光は龍に微笑み

なにひとつ変わらぬ そのままに変わらぬ

龍と光だけになって それでもそのままに

いつまでもそのままに

もはや崩壊の音さえも喪われているのに


たとえばそんなことを想うのだ

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