たとえばこんなことを想う
灰褐色の建物の小路を左へ曲がると
そこにはきっと小さな店があり
曇りガラスの扉をくぐると
そこには緑黄色の鱗の龍が
眼鏡越しにこちらをちらりと見て
すぐにまた丸いものを磨いている
丸いものを磨いて磨いて
目を射るほどに輝いて輝いているのに まだ
磨いて磨いて磨いて
ついにそれは光の珠となり
ぱあん
と
虚空に散る
龍はほうっと息を糸のように紡ぎ
眼鏡を押し上げ
頬杖をついて
また息を紡ぎ
ちょっとだけ鼻先を掻く
その鼻先に光の塵がひらひらと舞いつつ
龍に微笑む
遠くで大砲が爆ぜる
建物が燃え上がり崩れる
たくさんの人が魂を失う
がらがらと戦車がすべてを踏みつぶす
龍は息を紡ぎ
光はそっと微笑む
大地が消える
天空も消える
それでも龍はみじろぎもせず
息を紡ぎ
光は龍に微笑み
なにひとつ変わらぬ そのままに変わらぬ
龍と光だけになって それでもそのままに
いつまでもそのままに
もはや崩壊の音さえも喪われているのに
たとえばそんなことを想うのだ
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます