第2話 未来にいるはずの占星術師
天使たちの故郷である琴座のリラ星では、アンデを神官祭祀とする家族と十二の民族と百四十四の氏族による神聖君主制が敷かれていた。彼ら王族連合体はこの宇宙で初めて生まれた銀河人類だったが、科学技術の発展を超越的に極めていった際に、当初、禁じられていた宇宙創造神の聖域を侵犯してしまい、その帰結として愛と真理の均衡を見失ってしまった。大自然の愛の法から逸脱することで、一つの惑星と文明の崩壊を招いてしまった。アンデ率いる天使の王族たちは、自らの過ちを悔い、歪んだ愛の集積物の清算のために、当てどもなく数々の星座を、ベガ、オリオン座、乙女座、水瓶座、プレアデス星団、ペルセウス座、魚座、シリウスと、そのときは誰もいない地上の占星術師の視線のように様々な宇宙文明を築きながら彷徨っていたが、文明の陰りに必然のように反映される王族間の罪業故に、星座と星座との間で、無為に闘争を繰り返すことになった。やがて導かれるように航路の先に太陽系を発見し、感嘆と共に青い星を見下ろした。遥かな未来にいるはずの地星の占星術師と目が合った瞬間だった。
リラ星を崩壊させてしまった直接の原因となったリラ十二支族の一つの血脈ルビヤ族と、彼らを止めることができなかったリオン族は、地星で創造した原始人類に大宇宙本源の愛と神性を啓発させようとした。新人類を万物の霊長として地星上に存在するすべての創造物を愛する神の子にまで成長させることで、天使たちもその光の恩恵を受けて神の愛の軌道を取り戻せることを信じていた。子を愛する親の如く、生命の進化の最終段階に携わり、原始人類に知性と霊性を植え付けて、より自分たちの霊的な似姿である新人類の成長を待ち望んだ。
天使は新たな人類の養父母となり、少年と少女はメアイ、メーイェと名付けられた。二人の外傷を診て、高科学治療薬で傷口を修復して、メアイの骨折したあばら骨も身体の蘇生能力を促進させて直した。
地星文明の原点、天使の代表と人類の子どもたちとの新家族の花園の住居として、透き通った池に囲まれた大きな岩山が選定されて、住みやすいように岩の表面をレーザー光線で切り取って、雨風を防げるようにいくつかの部屋を用意した。リラ文明興亡の原因となったルビヤ族とリオン族が互いに協力して、花園の突貫工事の作業にあたった。
不要になった断面が綺麗な岩の立方体は、反重力技術で宙に浮かばせて、飛行艇で磁場を誘導して、近隣の砂漠にまで運んで、真っ平らに並べた。律儀に縦に積み上げてしまうと、万が一、この場所まで辿り着いた原始人類が、本能に従って太陽に向かって積み上げた岩を登り始めてしまい、当然、頂上には何もないので仕方なく落下して怪我をする危険性があった。地面との高低差をあからさまにしてしまうと、この地を中心にして、原始人類たちは岩を集めて、天に登るための階段を子孫代々建設し続けてしまうかもしれない。天使たちは反重力装置で砂丘の砂を砂嵐のように舞い上がらせて、岩の立方体の群れを大量の砂で覆って、一つの砂丘に見せかけた。
アンデの花園の開発は天使たちの智慧と力により順調に行われていった。
その間、メアイとメーイェは眠り薬によって円盤の内部で眠らされていた。
森林の奥の各所に果実のつく樹が植えられ、食べごろの林檎や無花果になるように、木の生育を調整した。魚の群れが池に放流され、何本かの石柱を横に倒して水中に沈めて、池の一角を水浴び場にした。そして花咲き誇る、アンデの花園が完成した。
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