11.19 「A」

朝のニューヨークの大通りはひっそりと静まり返り、通行人の姿は見当たらなかった。

初戦闘ファーストコンタクトから3か月がたち、ヨーロッパで始まった「奴ら」との戦争は、最終局面に近づこうとしている。

すなわち――――人類最強の軍隊―――――国連軍の崩壊だ。

まずは、ヨーロッパ諸国の軍隊が全滅。

続いて、中東、アフリカ大陸の軍隊も次々に「奴ら」の仲間入りをした。

そして、押し寄せたアフリカからの難民の中に、――――これはアメリカが最も恐れていたことだが――――「死にかけ」がいた。おそらくは、複数。

まずはスラム街。続いて中流階級の住宅街。「奴ら」はだんだんとその勢力を拡大し、金持ちの屋敷のほうへと近づいて行った。

そして、11月12日。大統領がついにレベル4緊急事態宣言を発動。アメリカ軍の総力を持って「奴ら」を撃滅せんとし、陸海空軍、沿岸警備隊、海兵隊の残存戦力すべてがニューヨーク郊外に配置された。(ワシントンはすでに壊滅、その機能を失っていたため、国連本部のあるニューヨークへ遷都した。)

その結果は、――――惨敗。大統領、戦死という大惨敗だった

「奴ら」はMOABさえも潜り抜けた。―――――――――



















アメリカ軍の壊滅により、国連軍はその戦力をなくし、自国の防衛を優先させた――――といっても、参加してもたかがしれている戦力しかもっていない国ばかりだったが――――国家が続出したため、国連は事実上、何の兵力も持たないただの飾りに成り下がる。

そのうえ、ニューヨークの本部がその機能を失ったため、国連は完全に崩壊。

国家は国家防衛を自国軍のみで行わなければならなくなった。

また、ロシア南部などの、もともと政治的に不安定だった国々では、混乱に乗じてクーデターが続出。

当然、指揮系統が麻痺したクーデター直後の軍隊では、「奴ら」に対してはなすすべもなく、国民の犠牲はさらに拡大した。

とりわけひどかったのは中国であった。

クーデターを起こした軍隊は、全部隊を香港に集結させ、自己防衛に全力を投入。

軍隊だけの特別区画(奴らと住民の侵入を防ぐための柵が張り巡らされ、中には軍関係者しか入れないため、軍関係者だけは身を守れるようになっている)が作られ、国民は見殺しにされた。

しかし、天罰だろう、「硬化人スティーラー」によるバリケード突破と、ネズミによる基地内感染で、軍部は壊滅。

奴らは13億人の――――「人」という数え方は正しいのか知らないが――――兵力を手に入れ、さらにその勢力を拡大していった。

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no lives,but they can move 小さな巨神兵(S.G) @little

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