②全知全能 VS 全知全能


 それでは、次の質問にいってみましょう。

 神様を論破するために考えた、とっておきの質問ですよ。


「神様は、同じ全知全能の力を持つ神様のコピーを作れますか?」


「もちろん作れる」


「ですよね。では、その神様コピーと戦って、神様は勝てますか?」


「なに……」


 神様は眉をひそめます。


「当然、勝てますよね? 神様は全知全能なんですから。まあ、相手も全知全能ですが」


「馬鹿を言うでないわ! わしがそんなものを作ると思っておるのか?」


「ごまかさないでください。作る作らないの問題ではなく、勝てるか勝てないかを聞いているんです」


「……む、無論、勝てる」


「どうやって勝つんですか?」


「相手がこちらに気付く前に殲滅する」


「それは無理でしょう。全知全能の力を持ってるなら、どんな攻撃も効かないバリアみたいなものを常時張っておくはずです。神様だって今そうしてるでしょう?」


「うぬ……。ではコピーする際に、オリジナルであるわしには手出しできぬようにしておく」


「そんなの簡単に解除されちゃいますよ。相手も全知全能なんですから」


「ならば、全知全能だが決してわしに逆らわぬ配下を大勢作ってコピーと戦わせる」


「いやいや、相手も同じことしてきますって」


「ぐ……」


「おや、万策尽きましたか?」


「そんなことは――」


「ないなら早く言ってください。それとも、神様は全知全能でないと認めますか?」


「認めん! 神は全知全能じゃ! そもそも、コピーなど作らなければ良いだけじゃろうが!」


「ダメですよ。全知全能の力はどんな条件下でも成立しなければ全知全能とは言えません。違いますか?」


「うぬぬ……」


「もう一度お聞きします。神は全知全能でないと認めますか?」


「……貴様、わかっておるのか? 貴様は今、決して踏み込んではならない領域に足を踏み入れておるのじゃぞ」


「いや、ですから、わたしは無神論者だから、そういうの関係ありませんって。別に神様なんて恐れ多くもなんともありませんから。それどころか、わたしは神様に憎悪の念すら抱いているのですよ」


「なんじゃと!」


「だって、よく考えてみると、この世界って、とてつもなく残酷な世界じゃないですか。弱肉強食、食物連鎖、他者を殺さなければ生きていけない世界。もし本当に神様がこの世界を作ったのだとしたら、悪逆非道にも程がありますよ」


「む……」


 声を詰まらせる神様に対し、私は容赦なく怒りをぶつけます。


「答えてください。どうして、こんな悲しい世界を作ったのですか? どうして、もっと優しい世界を作らなかったのですか?」


「待て。地球も地球上の生命も、わしが直接作ったわけではない。自然にできたのじゃ」


「だとしても、どうして放置しておくのです? あなたのせいで、地球上では何十億年もの間、食うか食われるかの戦いが続いてるんですよ? いったいどれだけの生き物が苦しんでいると思ってるんです?」


「うぐ……」


「最後にもう一度だけ聞きます。神様は全知全能でないことを認めますか?」


「……」


 あらあら、何も言えなくなっちゃいましたね。

 これは認めたと考えてよさそうですね。


「もう好きにせい!」


 だ、そうですよ、皆さん。


 これで神様は全知全能でないことが証明されました。

 もし反論があるなら、神様が神様のコピーに勝つ方法を教えてくださいね。

 できればの話ですが。



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神様、全知全能なんでしょ? ンヲン・ルー @hitotu

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