第8話 VSフォレストアイビー
植物系の魔物に有効なのは火だ。燃やしてしまえば一気に無力化できる。
しかし、ダンジョンのような狭い場所では火魔法を使うのはあまり得策ではない。
考えもなしに炎を放つと、こちらまで丸焼きになってしまうからだ。
故に、ダンジョンでの戦闘では、火魔法以外の魔法を使うか、武器での応戦が望ましいとされた。
2人は、迫ってくる魔物を持っている手段の中で適切なものを選び、各個撃破していった。
「ウィンドカッター!」
カームが放った風の刃が、魔物の蔓を切り落として無力化する。
そこに、剣を構えたジャドが突っ込んだ。
「せいっ!」
舞のような流れる剣捌きが、魔物の弱点である花の中心を切り裂いていく。
くたり、とその場に力なく潰れる魔物を踏みつけて、その奥にいる別の魔物へ。
打ち付けられる蔓での攻撃を剣で受け止めて、魔法を放つ。
「アイシクルランス!」
どがっ、と魔物を氷の槍が貫く。
魔物は蔓をばたつかせて暴れた後、力尽きて動かなくなった。
魔物の群れの中で剣を振るうジャドの背後に迫り来る影。
彼の注意の外にいた別の魔物が、彼を攻撃しようと蔓を伸ばしていた。
「ストーンバレット!」
そこを、カームの放った魔法が撃ち抜いた。
石の礫が花の中心を抉る。魔物はキィィと甲高い声を上げてべちゃりと潰れた。
しかし、魔物の数はまだまだ多い。多少数を減らしたくらいでは脅威は全くなくならない。
「ウィンドスラッシュ!」
「ウォーターカッター!」
更に2匹の魔物を魔法で仕留め、カームは魔物の群れの中心に飛び込んだ。
「ジャドさん、離れて下さい。一気に仕留めます!」
「はい!」
ジャドはその場を跳んで離れ、魔物の群れの外に移動した。
「シャドウファング!」
カームが魔法を発動させる。
魔法の白い明かりに照らされてくっきりと浮かび上がっていたカームの影が、ゆらりと不自然に大きく動く。
あっという間に巨大な竜の顎(あぎと)と化した彼の影が、魔物に容赦なく襲いかかった。
影は手当たり次第に魔物に喰らいつき、咀嚼し、ばらばらにしていく。
後には、魔物の体の一部である花びらや葉っぱ、蔓が床に大量に残った。
「アイシクルランス!」
カームの後ろにいた魔物は、ジャドが魔法で1匹ずつ仕留めていく。
こうして、通路を塞いでいた魔物の群れは無事に駆逐された。
魔物の死骸を持ち上げて、ジャドは静かに息を吐いた。
「こんなに群れているとは思いませんでした」
「フォレストアイビー……これもフォレストキャタピラー同様に外からダンジョンに入ってきてそのまま住み着いたのでしょう。まさかこんなにいるとは思いませんでしたが」
カームは少々惜しそうな顔をして魔物の死骸を見つめた。
「フォレストアイビーの花びらは錬金薬の素材になります。持ち帰りたいところですが荷物になってしまいますし、諦めましょう」
魔物の体の一部には何らかの素材になるものが多い。冒険者はそれを街に持ち帰って冒険者ギルドで換金し生計を立てているのだが、持ち帰るにはそれなりの手段が必要となる。
彼らには、魔物の素材を持ち帰る手段がないのだ。
元々素材狩りに来ているわけではないので仕方のないことなのだが、これだけの素材を捨てていくのは惜しいとも言えた。
「さあ、先に進みましょう」
「はい」
カームは腰に差していた杖を取り出して、言った。
2人は魔物の死骸を踏み越えて、更にダンジョンの奥を目指して歩を再開した。
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