17-09 あのグラフのようになるんだよ
三度の乗り換えを経て、おそらくまだ千葉県内にいるのだろう、ショッピングモールの屋外
俺たちはしばらく待ってみたものの、その後、乗り換え用の車が回されてくることがなかったため、この場で待機していろ、ということだろうと受け止めた。
一時間まえに新東京駅にいたのが信じられない。
ショッピングモールの駐車場、しかも、車内という静かな空間に身を置いていることに現実離れしたような感覚に襲われた。
霧島榛名を連れ出せたこともあって、俺のなかで緊張の糸が切れてしまったのかもしれない。となりに榛名がいることを気にしながらも、
これもまた収束に身をさらしてしまった結果なのだろう。
俺は、部室にいた。
外は雨らしい。ぽつぽつと雨が窓を叩く音が空間に響く。
暗くなってしまった部室は、
みんな、なぜか暗い顔をしてうつむいている。
そんななか、柳井さんは、ホワイトボードに、24件と書き込み、ペンでその数字を指した。
「この二四という数は、ここ数日に世界中で起こった、突然姿が消えるいわゆる
柳井さんは一度言葉を切り、一度ちばちゃんと青葉綾乃のほうを見て、一呼吸置いてから、ふたたび口をひらいた。
「あと特殊なものに、これは記事の画像にはすでに
「関係はあるだろう。磯野君のドッペルゲンガー、あれは、重なり合う世界の数が
三馬さんは、ソファから立ち上がり、ペンを受け取って、ホワイトボードに二つの円を書き込んだ。
「今回の異常現象は、ドッペルゲンガーのように
ところがだ、と三馬さんは続ける。
「今回の、突然人が現れたり消えたりするのは、入れ替わる互いの世界に、決定的な
「俺たちの世界と、オカ研世界が干渉し合っているってことか?」
「正確にはわからん。だが、いままでの磯野君が関与してきた世界はオカルト研究会の世界なのだから、なにかしらの影響はあるというのが自然ではあるがね」
ただし、と三馬さんは発したあと、少し考え込み、
「いままでの想定からすれば、この映画研究会のある現実世界と、オカルト研究会のあるもう一つの世界の距離は、むしろ離れていってしまっている、と考えていたのだが」
「じゃあ、このままいくとどうなるんだ?」
柳井さんの問いに、三馬さんは二つの円を描いては近づけていきを繰り返し、最終的に二つの円を同じ場所に書いて重ねた。
「こういうことだ。二つの世界が重なって
「……融合?」
「宇宙と言ったほうが良いか。二つの宇宙が融合し、情報量が二倍に
「……ブラックホール」
「あの、一つの宇宙すべてが質量により重力に落ち込んでいくんなら、僕たちはブラックホールに落ちたことには気づかないんじゃないですか?」
「竹内君、いいことを言うね。私たちは気づかないが、重力の歪みによって時間の矢が
三馬さんは前にも書いた右へ向かう線が、次第に上へと逸れていく曲線へと変化させて引いた。
柳井さんは、ハッとして三馬さんを見た。
「色の薄い世界へとむかってしまう。つまり、世界の
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます