16-06 わたしも霧島榛名の説得に協力します
「なんだって!?」
この世界に降り立った八月七日のあの夜、プラットホームに霧島榛名がいたっていうのか。そこで捕まえられていれば、いままで起こらなくても良かったことを
「わたしは当初、プラットホームで霧島榛名さんに接触しましたが、榛名さんのクローンである同じ容姿のわたしに、彼女は混乱してしまいました」
ああ、そうか。
榛名にしてみれば、ドッペルゲンガーに遭遇したようなものだ。俺と同じようにドッペルゲンガーによる
「とはいえ、状況が許さなかった。当時、日本政府の
渋い顔をしながらライナスが言う。
「彼女は混乱の結果、イソノさんが乗車した一つの前の車両――チューブリニアに飛び乗り、HAL03もまたあとを追った」
「チューブリニア?」
「
「……横須賀米軍基地ってことは、榛名はいま、ここにいるんですか?」
「いや、
「消息を絶った?」
「きみと同様、ハルナさんもまたゴーディアン・ノットによる襲撃を受けた。最終的にZOEのコントロールしていた乗用車は
「ちょっとまってください。八月七日からならもう一週間以上経過してますよね? そのあいだ、榛名は行方不明なんですか?」
「そういうことだ。本日から
「海?」
「三日前、川崎市の海岸に、キリシマ・ハルナさんの
「……え? それって、」
「残念ながら、イソノさんのものとはべつに、地球規模の
三度の生存世界への収束。
榛名が体験したことを想像して吐き気がした。
いま現在、榛名は生きている。
それは救いにほかならない。だが、溺れ死ぬ苦しみを、榛名は三度も味わっていたってことだ。一瞬で死を迎えられる方法である頭を撃ち抜くのとはわけがちがう。とても苦しい思いをしたのだろう。
「そして二日前、ZOEが
「城南島海浜公園?」
「公園は、東京都
「わたしも霧島榛名の説得に協力します。磯野さん、姉を、よろしくお願いします」
車椅子の少女は、そう言って頭を下げた。
俺は、彼女にうなずいた。
彼女へのあまりの懐かしさからか、その他人
映研世界、オカ研世界同様、この世界でも霧島千葉から榛名のことを
あまりにも強大な敵を相手に、やつらの追跡をくぐり抜けながら彼女を救い出さなければならい。その事実を受け止めるからこその恐れなのだろう。
――けれども、なんとかして救い出さねば。
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