15-09 彼女を紹介しておきたい
「この世界を消滅させる? いったいどういうことです?」
鷲鼻の男は「説明しよう」と言って眼鏡のブリッジをおさえた。
「この世界に流れ込む情報には、当然
「ブラックホール?」
「ブラックホールは、限られた
情報とか質量とかのことはよくわからない。
けどそれって、この世界を犠牲にすることで、俺たちの世界を救うと言ってるのか?
「あの、あなた方の世界が消えてしまってもいいんですか?」
「ああ、
「ほかにこの世界の消滅を止める方法はないんですか?」
「この世界を救う方法があれば、我われはその方法を
――世界を救う。
この世界にきてから何度も聞いた言葉。
なぜ救うことになるのか、その原因を目の前の男は伝えてきた。「情報の道」から流れ込んでくる情報と質量の集中、そのポイントがこの世界の地球であり、ブラックホールの発生源になること。それならば、その原因に深く関係している俺と榛名を、この世界の人間たちが
だが、目の前の男は、世界を救うという意味を俺たちの二つの世界に
「あの、朝倉博士と真柄先生は、俺たちに世界を救う力があると言っていました。
「彼らが救おうとする世界とは、いかにもこの世界のことだ。きみたちの世界じゃない。彼らが、きみやキリシマ・ハルナさんを確保するのは、きみたちの持つ力を得ることによって
「……そんな」
だが、よくよく考えればそうだよな……。
俺がこの世界に
「確実に救えるきみたちの世界を取るか、本当にあるかわからないこの世界を救う方法を見つけ出すか。この選択肢は、あまりにも
……信用。
あの研究所では、
それでも、いま聞いたような話をされていたら、俺は
――この世界を救うために、自分たちの世界を犠牲にする。
いや、彼らが俺たちの世界もふくめて解決策を見つけようとしたにしても、俺は、自分たちの世界を危険に晒してまで、この世界の
けれど、彼らのやり方を俺は受け入れられない。白い部屋でのあのメスの件はまだしも、榛名に対して彼らがやったことを、俺は許せるはずがない。
「私はアンドリュー・ライナス。ライナスと呼んでくれ。きみはもとの世界に戻りたいはずだ。我われはきみたちの世界の消滅を阻止したい。我われは協力出来る。力を貸してくれ」
アンドリュー・ライナス。目の前の男は、俺や榛名、二つの世界で起こったことを把握していた。さらに、これから起こるであろう危機を伝えたうえで、俺たちをもとの世界に戻そうとしてくれている。榛名を連れてもとの世界に戻るという俺の目的にも合う。
けれど、腑に落ちない点がたくさんある。まず、
――この男を信用出来るのか?
朝倉博士や真柄先生は当然信じられない。
だからといって、目の前のライナスと名乗る男の言うことだって、どこまで本当かわからない。
「ライナスさん、あなたは榛名を、二度も見捨てようと、いや、使い捨てようとしましたよね。さっきの話で、俺の死の回数を減らそうとしていたのは理解出来ますし、助けていただいたことにも感謝してます。けどね、世界を救うとかそういうことをしようとする人が、となりにいる人間を使い捨てるように扱ってたんじゃ信用なんて出来ませんよ」
「イソノさん、我われに疑いを持つのも当然だ。だが理解してほしい。目的を
彼女……電話の主ってことか?
突然、着信音が鳴った。
ライナスと榛名のうなずきを確認したのち、俺はポケットからスマートフォンを取り出した。通知不可能の文字をふたたび見とめたうえで電話に出ると、霧島榛名と同じ声が俺の耳に届いた。
「私の名前はZOE。
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