15-10 戸惑った記憶がある、と言ったほうが正確なのだろうが
「……ゾーイ」
電話の主は「
「ZOEは、ギリシャ語のゾーエー、つまり
この人たちの背後にいるのは、アメリカ合衆国政府ってことなのか……。にしても、まるでSF映画ような話だ。いや、いま現在、この世界で近未来的なものなど何度も
「アメリカ合衆国……あなた方はアメリカ政府の人間なんですか?」
「正確にはちがう。現在、我われは合衆国政府のために働いてはいない。いま私が動いているのは、ZOEの
「極秘のプロジェクト? なぜ、あなたに?」
「私が、生みの親だからだ」
生みの親……あの電話の主の開発者ってことか。
「ZOEが打診してきたプロジェクトとは、さきほどきみに話した、きみとキリシマ・ハルナさんをもとの世界に戻し、二つの世界を救うというものだった。最初は私も
そう言ってライナスは一度、となりにいる彼女を見た。
「しかし、真の意味で人類を救うためには、国家、いや、世界を超えた
「ハル?」
顔を向けたさきの彼女は、ひとつうなずいたあと口をひらいた。
「
「私が名づけた」
それって、もしかして、
「『2001年』?」
「いかにも」
「なぜ人類に
「だからこそ、人類はさらなる進化へと
この世界で映画『2001年宇宙の旅』の名前を聞くことになるとは……。けれど、だからこそこの世界が自分たちの世界がもとになっている、ってことかもしれない。
「私たちバイオロイド・クローンは、ZOEによって五体が生産されました。
命を落としている?
俺の世界で?
彼女はそこで言葉を止めると「あなたと会ったとき、霧島榛名と嘘をついていました。ごめんなさい」と言ってうつむいた。
「……大丈夫、気にしないでくれ。俺はもうなにも思っちゃいない」
事情はわかったんだ。いまさらそれを
「……ハル、さっき、命を落としたって言っていたよな。あれは、どういうことなんだ?」
その名をあえて口にしてみたが、なんだか申し訳ない気持ちになってしまう。どこかで、彼女のことを、榛名と呼んであげたい自分がいることに気づいた。
彼女がそう呼ばれたときの、俺にむけた、あのあどけない笑顔が忘れられない。
彼女は、俺の質問に答えようとして、けれど、そのままうつむいてしまう。
「イソノさん、もうわかっているだろうが、我われは、きみたちの世界で起こった
ああ、ライナスの言うことはわかる。
俺や二つの世界で起こったことを、把握していたんだ。
「つまり、彼女たちは俺たちの世界にも来ていたってことですか」
「そういうことだ。それに、きみはすでにHAL02を
15.彼女の名前 END
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