15-08 それは無限の力では無い
まるで三馬さんを目の前にしているかのようだ。
すべて理解出来ないとはいえ、いままで俺が
「まってくれ。わかりやすく説明してくれているんでしょうが、俺には理解が追いつかない。
「「創造者」か。ドクター・アサクラはすこしロマンチストに過ぎるな。だが、間違ってはいない。きみたちの起こした並行世界のインフレーションは、この世界を生み出しただけに止まらない。現在のきみとハルナさんは、この世界における、まさに神のような存在だ。きみたちの
朝倉先生たちが言っていたことと同じだ。
だけど、この世界への影響って、いったいどういうものなんだ?
「ひとつ例を挙げるならば、きみたち二人がこれまでにこの世界で命を失ったとしても、生きている世界へと収束したはずだ。これが世界がきみたち二人に与える影響のひとつだ。二人がこの世界にいる限り、「生存世界への収束の力」もまた、きみたちに
生存世界への収束。
ドッペルゲンガーのときに起こったのと同じ、べつの並行世界への収束。
たしかにあの作用のおかげで、俺と榛名はあの脱出から生き延びられたんだ。けど、なぜそんなことが起こる?
「ドクター・アサクラの言葉を借りれば、きみたちはまさに創造者――神の力を持っていると言えよう。この世界が、きみたち二人を生かすこと、すなわち、きみたちの可能性を
鷲鼻の男はそこで言葉を切ったのち「しかし、それは無限の力では無い」とつけ加えた。
「この世界におけるイソノさんとハルナさんの死には、当然リスクをともなう。このリスクには二つの意味がある。一つ目は、きみたち二人の死がこの世界に影響を与えるだろう。その影響は、
生存世界へ収束される回数が……有限?
「もしなにかしらの死がきみを襲ったとして、イソノさんが生きている世界に収束出来るのは、生きている並行世界が、死んでいる並行世界の数を上回っている場合においてのみだ」
「死んでいる世界の数を上回っている場合?」
「
五〇パーセントを超える?
……いや、
ドッペルゲンガーのときと同じで、無数にある並行世界のうち、いちばん可能性の高い選択肢を取った世界線に、俺は収束されるんだ。そのスイッチが、いま現在ここにいる世界線での死を迎えたときに起こる。そして、死んだ世界線の数が、生きている世界線の数を超えてしまったら、生存世界への収束は起こらない。
けどそれって、有限ってことは、
――死んでもいい回数にも限りがあるってことだよな?
いままで俺は、何回死んだ?
八月七日に二回、そして、あの研究所で二回……だから、
「――四回。八月七日からいままで俺は四回死んでいます。俺が死んでも大丈夫な回数は、あと何回残されているんですか?」
「すまない。それは我われにもわからない」
「わからない?」
「有限とはいえ、並行世界の数は膨大だ。その無数の世界をすべて
鷲鼻の男はつづける。
「もっとも
俺の死んでいる並行世界が、リアルタイムで増えつづけている?
いま現在も俺が死ぬ可能性がどんどん増えてるってことかよ。そんなの、無敵でもなんでもないじゃないか。いやいままでだって、死んだら生きている世界に飛ぶなんて
だけど、これまでの追い詰められた状況を考えろ。死による収束でしか危機を乗り越えられなかった。仕方なかったんだ。
……本当にそうか? 八月七日の駅の
そうか! だから彼女は――
俺は榛名の顔を見た。
目のあった彼女は、俺がいま考えていることを
――彼女はこのことを知っていたから、
彼女が死ななければならないと言ったのは、俺が
だけど、もし俺が死を使った収束回数に
いやしなかったはずだ。絶対に。
俺の
「もう一度言う。我われは、二つ世界からの情報の流入を止めたい。きみとハルナさんが、この世界で死へと収束するまえに。そのためにも、二人にやってほしいことがある」
鷲鼻の男はそこまで言うと一度言葉を切り、まっすぐに俺を見すえてから口をひらいた。
「この世界を、
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