15-07 はじめまして。イソノさん
二階から見た窓の外には、森が広がっていた。
森のなかにある
「研究所を出た
屋敷の周囲には、
俺は二階の寝室から
映画に出てきそうな高級な屋敷ではあったが、俺たち以外に
部屋の中央に置かれているソファへ、すすめられるままに座ると「紹介したい方がいます」と言って、彼女は客間を出て行った。
あの電話の主だろうか。
この屋敷の
とはいえ、電話の主はこの子を使い捨てるように扱ってきた。
敵の動きを把握していたはずだった八月七日のあのときも。研究所での彼女の扱いも。もし、彼女が人造人間なら、それも納得できる。彼女が拘束されている
だが、そんな道具みたいな使い方、俺は許さない。
客間の入り口に人影が見えた。
「はじめまして。イソノさん」
入ってきた人物は、驚いたことに白人の男性だった。
グレーの
「八月七日の晩、きみが我々の指示に従ってくれたことに感謝している」
指示、やはり電話の主の仲間か。
いや、声を変えただけで、この男が電話の主だということもあり得る。
男はソファをすすめてきたので、テーブルをはさんでふたたび腰かけた。男のとなりに榛名が腰を下ろす。
「あの晩、きみは八月三一日の世界から時間をさかのぼり、我々の世界へと降り立った。
男が話し出した内容に、俺は
この世界に迷い込む以前からの俺の
しかし、気になる言葉がある。
「あの……なんのことを言っているのかわからないんですが」
「こう言えばわかるだろうか。きみたちのある「行動」の結果、
……無限に近い数の……インフレーション。
俺の
部室の壁すべてに
「――柳井のぼっちローラー
「その通り」
ひとり言のようについて出た俺の言葉に、鷲鼻の男はうなずいた。
「この世界が生まれ、二つの世界よりも進んだ
八月三一日のあのとき、部室の壁をすべて青へ塗りつぶしたんだ。
それは、それだけの数の俺が、あの部室にいたってことだ。つまり、部室の壁を青へ塗りつぶす数の並行世界と俺――
それが、天文学的な量だってことなのか?
たしかに膨大な数だったはずだが、その数は、目の前の男が言うとおり、無限に近い数だけ膨れ上がっていたってことか? けど、解らない。それがこの世界を生んだ? そもそも、見てきたかのように語るこの男は、いったい何者なんだ?
「きみたちのその「行動」によって集められた無限に近い並行世界の次の選択は、
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