15-02 研究所に留まってくれないか?
ふと、彼女を抱きしめてやりたい
俺のなかに湧いて出た、あまりに
と、彼女は、俺の肩に顔をうずめて、数度
もう警戒とかそういう問題じゃないだろう。
もし俺に人の気持ちがあれば――
彼女の震える
頭のなかに出てくる数々の言い訳に、自分自身が
ちがうだろう? 人とかどうかそういう問題じゃない。
――俺が、彼女を受け入れたかったんだ。
落ち着いたのか、彼女は口をひらく。
「……ごめんなさい」
「いいんだ。大丈夫」
拘束から
彼女は俺に背を向けた。
上着に
「……磯野さんがここにきたということは、彼女の指示なんですね」
……彼女。そうか、電話の主とこの子は
「ああ。その彼女が何者かはわからないが」
「ごめんなさい。のちほど説明を。ただ、一つだけ。彼女は
「それはわかっている」
「ここからは、
ボタンを留め終わった彼女は、俺に振り返りそう言った。
上着一枚の、ローブ姿の彼女。
盛り上がる胸と、シャツの下から伸びるスラリとした脚に、いつのまにか
「この
「この建物については
ドアがあったはずの壁は、俺がその前に立つことで
「すでに研究所内の通信をすべて遮断しているのでしょう」
「どうすればいい?」
「ここから一五階へ上がります」
「一五階?」
なにを言っているんだ? この研究所の建物は三階までしかなかったはずだぞ? もしかしたら
「磯野さん、ここは島ではありません」
「島……ではない?」
どういうことだ? この研究所に来て
「説明は
「山梨?」
山梨県って、
意味がわからない。そもそも海一つない
……いや、俺はそのニセモノを一週間ものあいだ見せられつづけただろう。
白い部屋のあのマジックミラー。あの壁みたいに、
「一五階に、この研究所から地上へ出られる
彼女は立ち止まった。
「なんだ?」
彼女の先を見ると、白衣の男がいた。
「……真柄先生」
「磯野君、研究所に
たった一人でそこにいる真柄先生は、
「真柄先生、助けていただいたことには感謝しています。けれど――」
この人たちは彼女を拘束していたんだ。
あんな拘束器具を使い、あのようなひどい姿にしてまで。そんなヤツらのことを
「あなた
その言葉に、彼女は、ハッとして俺を見た。
「磯野君、もう一度言う。彼女はちがうんだ」
そんなことはわかってる。けど、だからなんだって言うんだ。彼女は俺の
「俺は榛名とともに行きます」
俺は彼女の手を強く
すこしの
俺は、その気持ちに応えるように、一歩踏み出す。
「さきに進めば、磯野君、きみは死ぬことは無いだろうが、彼女は命を落とすだろう」
真柄先生の
このさきには「人を殺すことを
――
「
俺は彼女を見た。彼女は
「大丈夫です。安心してください」
どうする?
俺は殺されても死なない。殺された
――命を捨てても、彼女を守りきるんだ。
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