15.彼女の名前 人工島へと連れてこられた磯野は、再会した真柄に世界を救うよう説得される。ある晩、命の恩人からの電話の依頼で霧島榛名の救出に向かうが……。
15-01 あのとき、なぜ俺を助けた?
――人、人、人。
が、
俺はスマートフォンを耳に
「あれは……なんなんだ?」
「ルートを進んでください」
俺は目のまえの
もう一度
「あれは、なんだ?」
わずかな
「バイオノイド――
俺は立ち止まってしまう。
人造人間?
たしかにあれは、スイッチを押せば動き出すようなロボットのたぐいではないだろう。ところが、あの無数の「人」は、文字どおりスイッチが入れられていないロボットのように立ち尽くしている。もし、動き出すとしたら、人間に
「急ぎましょう」
「……ああ」
彼女の声にさえぎられて俺は我に返った。
人造人間なんてものが生み出せる
それなら、電話の主によってここに連れてこられた
「このドアです」
ほかのドアと同じように
「ここからさきは
「ああ」
電話の主の
俺の問いに対しては
とはいえ、いまはただ
彼女……霧島榛名がこの部屋にいると言うんだから。
ドアをあけると、さっきの部屋と同じように、ガラス張りされた壁で
――霧島榛名がいた。
白い
「榛名!」
「やはり、人造人間……なのか」
その言葉を発したことで、この世界で彼女にはじめて会ったときの、あのなにかが薄いと感じたその印象がなんであったのかが、俺の頭の中で
はじめてあったときの彼女は、
けれど、あのとき感じた薄い、という印象は、人間として血の通った温度のようなものの
その答えに
俺は、ガラス張りの壁を沿って延びる廊下の中央部に、白い部屋へと通り抜けられる
「マジックミラーか」
「……
ベッドに固定された彼女が、俺に気づいた。
俺は彼女に、問わざるを得ない。
「おまえは、誰だ」
彼女は目をそらした。
「あの電話の主は、おまえなのか?」
彼女は、
「助けてもらったことには
俺の最後の問いに、ほんのわずかだが、彼女の目に、
「私は……」
そう言って、彼女は首を振った。
そんな彼女を見て、気を
けれど、だからこそ霧島榛名の容姿が、俺を
そんなことを考えながら答えを待ちつつも、彼女の様子にいたたまれなくなってしまう。
仕方ない。
「なぜ霧島榛名と名乗った?」
「……磯野さん、あなたを
「ならおまえは……やはり」
――霧島榛名ではないのか。
「……いや、それはいい。あのとき、なぜ俺を助けた?」
「あなたは殺されてはいけないからです。それに……」
彼女はふたたび口をつぐんだ。
なぜ言葉を
俺は彼女に近づくと、彼女の顔は、
彼女は、首、肩、腕など
この子は
上から
腕を回しながら、彼女の右手首の拘束をはずそうとしたとき、俺の耳もとで、彼女は、
「ありがとう」
と
彼女の声はかすかに
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