11.二つの世界の螺旋カノン 磯野はとうとうちばちゃんの大学ノートを手に入れる。ノートを読んだ磯野は霧島榛名を救い出すため一つの決断をする。
11-01 バートランド・ラッセルはあの世でどんな顔をするんだろうな
八月十七日 十八時三七分。
「それにしても思いきったことを考えるね。ドッペルゲンガーとの
ただ、なぜか
「これがちばちゃんの大学ノート……いや、いまとなっては
三馬さんは、
「これは水の
三馬さんは大学ノートをゆっくりとめくっていく。
途中、ノートの何か所かを目を
「これは……八月七日の一〇時か。なるほどな」
「ええ。一〇時二一分。昨日
三馬さんは納得したようにうなずいた。
「ああ。こちらでも確認した。いま現在、世界一九カ国の
三馬さんはそう言って舌を出してみせた。
「この特異点――特異点Ⅰとしよう――の
――この時間以前と以後で、我々の世界が変化した。
同時刻にこの現実世界――映研世界から霧島榛名さんの存在が
三馬さんは榛名の大学ノートの雨に
「
「世界五分前仮説ってなんです? なんとなく聞いたことはあるんですが」
柳井さんが口をひらく。
「人々が過去について語ろうとしたとき、記憶の中でしか語れない。つまり、我々の言う過去とは記憶の中にしかなく、現実に過去があると誰も
三馬さんはうなずく。
「話を戻そう。なぜ世界が切り替わってしまったのか?
――この世界そのものが、霧島榛名さんの入れ替わりやドッペルゲンガーによる世界の
いわゆる自然界における世界規模の
「それってつまり、ドッペルゲンガーによる世界の変質化を止めるために、世界が、その原因となる霧島榛名の存在を消した?」
「そういうことだろうね」
「てことは、いま起こっている俺のドッペルゲンガーの発生も、世界による
――世界が、俺を消しにかかる?」
三馬さんはうなずいた。
「三馬、それなら八月七日の時点で、その霧島榛名のいない世界として正常化されたわけだから、それで終わりだったんじゃないのか?」
柳井さんの
「そうだとも。世界は正常化されたんだ。少なくとももう一つの世界――オカルト研究会の世界は、まったく問題無い世界として創り替えられただろう。ところが、この現実世界――映研世界では一つ問題を残してしまった」
ああ、そうか。
「……霧島榛名の大学ノート」
「そのとおり。この世界には、霧島春奈さんの大学ノートが存在したままになってしまった。この大学ノートが消えてしまわなかったために、ふたたび世界の変質化が起こってしまったのだろう」
大学ノートの接触から、俺の身に起こったさまざまな出来事。
そう、最初からあの大学ノートが原因だと何度も
「八月七日に、霧島千葉の鞄にあった、その大学ノートを見たことで俺が
三馬さんは、答える。
「その接触が、正常化された世界に新たな歪みを生み、映研世界とオカ研世界――二つの世界を結ぶ二つ目の特異点となった」
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