08.インフレーション 色の薄い世界へ再度迷い込んだ磯野はその中で霧島榛名と接触、しかし置き去りにしてしまう。そして再びオカ研世界へ。
08-01 すごくいい匂いするぞ
ホテル四階にある男部屋へ到着した野郎三人と
一番手まえのベッドを
男部屋に来るのはテンションが上がるんだろうが、さすがにはしゃぎ過ぎだろう。とはいえ、白いワンピースにすっと伸びた手足と、整った顔立ちの彼女を眺めていると、お嬢様がふだん
「僕のベッドだよー」
にこやかに手をあげる
榛名はニヤリと
うんアホだな、アホがおる。
その直後、ナワバリでちがう臭いを
「なあ竹内、ひょっとしておまえ女か? すごくいい匂いするぞ」
「えーそんなことないよー。あははは」
どうせ温泉
匂いはともかく、千尋は男の娘をさせても通用する容姿ではあるが。
さて、俺が映研世界に戻り
その日は、まず入れ替わった「もう一人の俺」に、オカ研出身かどうか確認したそうだ。
「昨日までの
「映研出身の俺と、オカ研出身の俺がいるのは納得できます。けれど、それとはべつに三人目の、しかも映研出身の俺がいるっていうのは、どういう
と、口に出しながらも
この三人目の俺、というのがどうにもしっくりこない。俺自身この世界にいて
「わからんよ。だがこういうことを考えさせたら頼りになりそうなやつに声をかけておいたから、そいつに任せたらなにか
「
柳井さんは一瞬驚いたが、すぐに
「映研世界の俺も三馬を頼ったのか」
「ついさっきですが、三馬さんに「文字の浮かび上がり
ふと、榛名を抱きしめてしまった
こちらに気づいた榛名は、最初、
なに、その
わざとらしい以上に、胸に刺さりまくりなんだが……。
「なるほど。まずはこっちで起こったことの
「はい。磯野、ちょっと待ってね」
竹内千尋は、榛名の座るベッドの
榛名は千尋の肩越しからノートをのぞく。
こうして二人を見ていると、あたかも
「えっと……まず最初に――
磯野以外の人間が大学ノートに書き込みをしてもなにも起こらない。
スマホなど、デジタル
磯野の思ったことの
書き込み回数が増えるうちに、
数ページにわたる文字の浮かび上がりが起こった際は、書き終わりのページに移動していた。
そして、書き込む量が増えるごとに、磯野自身も
伝えることが無い場合は、なにも起こらない。
――くらいかな」
疲労感やページ移動は俺も
俺は、自分のリュックから大学ノートを取り出して、書き込みの最後のほうのページをひらいた。
なるほど。たしかにところどころ、一文
ほかに気になるところは、八月十二日の夜、オカ研のサークル旅行前夜にもう一人の俺が書き加えた内容だった。
八月十一日の午前三時二五分に、入れ替わったことに気づいたと書いてある。
午前三時二五分……。
そうか。あの日は、撮影旅行の朝、怜の電話で入れ替わりに気づいた。
けれど
……やはり「ウォーキング・デッド」のシーズンⅡは飛ばすべきだったんじゃないか?
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