06-06 高木って誰だよ!
「……怜?」
……なんだよこれ……ものすごく
しかも押し倒してしまった
と、そのとき気づいた。
――そうだ、俺は、
どーでもいいわ!
――求められている?
キャー。
やかましい!
……じゃなくてだ、どうしたんだ千代田怜。いや、だが、俺もまた少なからずいま目の前にいるこの女の子に
まてまて慌てるな。目の前の
――俺は千代田怜のことが好きなのか?
って、欲情など置いておけるかーい!
だが、ならこの状況をどう乗り切ればいい?
いや、乗り切るんじゃない。これはもういっそのこと欲情に身をまかせるべきではないのか? 迷う時間は無いぞ磯野。この瞬間の千代田怜は恐ろしく魅力的だ。この儚げな目で見られていながら、機を逸してしまうラブコメ主人公のような腰抜けな真似などできるものか!
そうだよ、ラノベでもアニメでもいい、こんなシチュエーションを見る度、俺はいつも主人公にこうdisってたじゃねーか、
――この
……いやいやまて、おまちください磯野さん。このまま事を進めてしまったら千代田怜と付き合うことになるんだぞ。それで……てことは……付き合うということは、こいつの
「高木って誰だよ!」
「……磯野?」
よし、
それにもし「
いくぞ、磯野。
そう、ゆっくり、ゆっくり顔を近づけて……。
怜はゆっくりと目を閉じる。
花火にうっすらと照らされる中で。
そして、お互いの吐息が混ざり合うその距離まで――
ブルルルル……ブルルルル。
「あっ」
二人してハモった。
怜は慌てて
「はい」
「千代田さん、まだ来ないんですか? もう少ししたらみんな戻りますよ」
スマホから漏れる声は青葉綾乃。
なんという
……いや、考えようによっては、タイミングが良かったと言えなくもないか? ……にしては、すごく惜しい気がするのは気のせいじゃないんだろうな。
「あ、……うん。すぐ行くね。磯野も起きたから一緒にむかうね」
「わかりました。もう、何度送っても反応しないんだから。……もしかして、磯野さんとちょっとした感じでした?」
こんのクソガキがああ!
青葉綾乃の
「そ、そんなことないよ。なんであいつなんかと……」
「ふふっ。冗談ですよー。じゃあまってますねー」
通話が切れた。
とても気まずい。
「磯野」
「はい?」
われながらものすごい
そんな俺の様子を気にしてかわからないが、千代田怜は少し
「……行こっか」
そう言って、浴衣を直しながら立ち上がった。
うわあ、なんだろうこのやるせない気持ち。こんな気分になるのも――
……やっぱダメだ。
悪い、怜。やはり、俺は……ラブコメ主人公だった。
気まずさと、とてつもない後悔を心に抱きながら湖岸へと向かう。
「磯野、今朝の寝坊のことまだ許してないんだからね」
ちょっとうつむき気味の怜がぼそりと言う。
「なんだよ、まだ気にしてんのかよ」
けれど――
「……悪かったよ」
怜は微笑んで、
「……遅すぎ」
その会話がきっかけになって、俺と怜は次第にふだん通りの憎まれ口を言い合う
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます