04-08 やっぱり文字がちがう……かな
学生食堂にむかう途中、
あの誰もいない無音の空間には二度と迷い込みたくない。
そんな怖れからか、目に入ったあのベンチが色の薄い世界の入口に見えてしまう。だが
学生食堂は、お
「磯野だけならともかく、ちばちゃんも見たって言うしなあ。常識的に考えれば、見間違えじゃないかと疑うんだが……。実際のところ、俺も見てみないとなんとも言えないな」
俺はただうなずかざるをえない。
「あとでなにかしら
柳井さんの言葉に俺と同じようにうなずくちばちゃん。
俺も
再現か。
「最初に書いた箇条書きと……そのあとの「あいうえお」のなにかがちがうから再現できないってことか」
俺のひとりごとに柳井さんはうなずいた。
まず明らかにちがうといえば――
「やっぱり文字がちがう……かなあ」
「あのなあ……」
「そもそも磯野はなんで書き込もうと思ったの?」
「あ、わたしも気になってました」
プリントの裏に書き出した――正確には書き出そうとしたものが浮かび上がった――あの
「ここ数日
俺の言っていること、間違っちゃいないよな?
「なるほど」
「確かに一昨日は大変でしたねー」
千尋とちばちゃんは、それぞれ似たような反応をしながら昼飯に口をつけた。一方の柳井さんは、いつの間にかカレーを
「二つを
なるほど、言われてみればその通りだ。
「一方で、そういう
「ちょっと! わたしがいないあいだに話進めないでくださいよ」
千代田伶がそう言って、ちばちゃんのとなりに腰をかけた。こいつの昼飯は、学生生協で買ってきたたまごサンドとコーヒー。そして、
「はい、これ必要でしょ?」
と言って、大学ノートを
大学ノート……。
「ルーズリーフとかリングノートのほうが便利かなと思ったけど、さっき大学ノートって言ってたから」
こういうところは気が
怜を見ると涼しい顔をしていたが、わざわざ気を利かせるあたり、今回の件についてこいつも
「一二〇円」
そう言いながら手を差し出す千代田怜。
「え? 学生生協なら
「
「おまえのこと少しでも
「当事者はあんたでしょ」
そりゃそうだが……
「なるほど、たしかにさっきのプリントの裏とノートの比較も必要だね。あのプリントだけで発生するのか、ほかの紙でも文字は浮かび上がるのか。そもそも磯野じゃなくても文字を浮かび上がらせられるのか。なんだかワクワクしてきたよ」
俺たちのやり取りなどお
千尋の言葉が
「ところで磯野、さっき書き込んでたのって――」と千代田怜。
「ああ、九月祭のなんかの
「ちょっと、なんでそんなものに書き込んでるの? また委員会に取りに行かなきゃいけないじゃない」
「手ごろな位置にあったんだからしかたないだろ」
俺の
とりあえず、みんな乗り気なのはありがたい。このままあの超常現象を上手く再現できればいいんだが。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます